ワンパンマン
□宇宙人拾いました。
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再びベンチにどっかり座る。やあベンチ。さっきぶりだね。
さっきと違うのは隣に死体が眠っていることだ。真っ黒。
しかしこいつでかい。容易に運べない。いや、普通ヒーローや警察を呼ぶものか。
警察は・・・やめよう。混乱して私が疑われそうだ。
無免ライダーさん辺りなら運んでくれそうだなと思いながら携帯を取り出してやめた。
彼が来てくれたらラッキーだが、ほかのC級のヒーローはそこらへんのガキより態度が悪い。
そうなると運べないじゃないか。
ため息をついて宇宙人を見つめる。不思議なものでここまで真っ黒焦げでもくずれない。宇宙人パワーだろうか。
よく見てみるとひとつ目だった。その先にあった瞳の色は何色だったのだろう。虹色とかだったら笑ってしまう。
生きていたら、どんな感じだったのだろう。
なんだかこの死体に妙な愛着が・・・いやいやそれはダメだろ自分。
カオスな思考の鍋をかきまぜていると不意に声がかけられた。
「おいそこのアンタ、何している」
あ、やば!これ、見つかったら私がお縄なパターンじゃないか!
「え、いや・・・ちょ、ちょっと相方が眠ってしまって」
く、苦しい。間違っちゃいないけど!
「む・・・。相方は随分と生体反応が弱っているぞ」
「・・・え?」
ちょっと待てなんでそんなのがわかんだこいつ。
え、それよりも、
生きてるの?
「よければ俺が家まで運ぶが」
「え、だ、大丈夫、です?」
「・・・ああ、俺はS級ヒーロージェノスだ。不審なものではない」
「あ、そうですか」
S級ですかそりゃびっくり。でも今私は冷や汗のナイアガラの滝だ。
「・・・お前はいいかもしれんが、このままだと相方、死ぬかもしれないぞ」
「えっ・・・!」
「病院の方がいいか・・・待て、今地図を」
「あああああ大丈夫です!ぜひ私の家まで!」
「そう、か?」
のしのしと近づいてきたじぇのすさんはくそイケメンだった。
あー、なんかミーハーな同僚が騒いでいた気がするな。
よいしょと宇宙人をおんぶするじぇのすさん。生体反応はわかるのに宇宙人だってわかんないんだ・・・。
「どうしてこんなに焦げているんだ?」
「料理に失敗したの」
私の脳みそはいよいよ働かなくなってきたようだった。
「そうか」
それで納得するじぇのすさん。大丈夫ですか。
家に着くと「応急処置は流石にしておけ」と言って救急セットをくれた。
「何から何まですみません」
「いや、俺は先生の言葉に従っているだけだ」
「良い先生ですね」
「ああ。素敵な先生だ」
心なしか頬が紅潮してる。もしかして恋人とか?
そんな疑問が浮かんだところでじぇのすさんは帰って行った。
私も部屋に入って遺体・・・じゃなくてけが人に応急処置をほどこしていく。
時刻は深夜の二時をさしている。明日が日曜日でよかった。
「あんた生きてたのね」
クルクルと包帯を巻く。
「まあ聞こえてないだろうけどさ。目覚めた時は起こしていいからね」
起きる確証はないけどさ、と続ける。
「こんなボロボロでも助かったんなら、次はもうちょっと人のために生きればいいんじゃないかな」
まだ起きるかもわからない宇宙人。
「ごめんね、適当なこと言って。でもね、平穏に生きるって思ったよりはつまらなくないよ」
巻き終えてほっとする。
「じゃあね、おやすみ」
ソファにねっ転がって電気を消す。
おやすみなさい。