ワンパンマン

□宇宙人拾いました。
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その日のお昼は大変だった。

いつも通り皆が忙しく働く最中、地響きと同時に地震かと思うほどの揺れが襲ったのだ。

いや、正直地震だと思ってたんだけどね。震度6ですって。よくビルがもったな。



後のラジオニュースによると宇宙船が高いところから落とされたらしい。宇宙人なんて本当にいたのね、とかいまさら言わないよ。怪人が連日暴れる世界なんだから。

そしてヒーローたちは頑張ってくれたんだろうけど、こちとら書類の塔が崩れちゃって社員全員オーバーワーク。
普段は全くない残業が一気に襲いかかってきたものだから最後に見た同僚たちの顔はお化けもびっくりな顔だった。


残業終了の後も散々だった。
帰るころにはスーパーも閉まってて、おまけにA市が完全に機能しなくなったことで交通機関も大荒れ。2kmほど歩いてX市に帰ってきた私を褒めて。畜生もう足動かん。

あまりの疲労についに耐えきれなくなった私の身体は、本能的に近くの公園に引き寄せられた。どかっと大きな音を立ててベンチに座る。あー、生き返る。
ここはアベックのたまり場なのだが、さすがにA市壊滅に恐れをなしたのかいなかった。
いたとしても今日の私は遠慮などしなかっただろう。うん、滅びろ残業。

駅の自販機で買っておいた缶ビールをプシュッと開ける。ごくごくと景気よく飲んでいるとようやくだるさがマシになってきた。
まだ冷たい缶を首筋に当ててみる。ひんやりとした感覚は眠ってしまいそうな思考回路をなんとかとどめた。

しばらくその感覚に目を閉じていると後ろの茂みからガサガサッと音がした。それだけじゃない。金属同士がふれあうような高く澄んだ音もする。
いまさらアベックでも来たっていうのか。退かないぞ、私は。
その意味も込めて後ろをキッと睨むと――銀色のロボットみたいなのがこっちを見ていた。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・あ、どうも」

「・・・・・・」

なんとか絞り出した声にも反応せず、ロボットは再び自分の作業に没頭し始めた。
作業、というのは、どうやら奥に積み上げられているらしい「何か」をいじくったりしていることだ。
なんとなくこのまま先ほどの雰囲気には戻れない。醒めてきた頭でそんなことを実感しながら恐る恐る話しかけた。

「あの、何しているんですか」

「・・・・・・」

「ち、近くで見て」

「ダメダ」

そこは即答かよ。
不満げな私の気配が伝わったのか、渋々といった雰囲気で(顔は動かないしね)説明をしはじめた。

「コレハ兵器ダ。シカモ宇宙カラノダ。触レテ安全ナ保障ハナイ」

「そんなもの公園でいじくるなよ!」

悲鳴に似た声があがる。こいつ頭おかしいんじゃないの。下手したら私、死んでいるんだけど。

「分カッタラ退ケ」

流石に兵器に退かないほど馬鹿でも命知らずでもないので「気を付けてくださいね」と言って立ち上がった、ら。

「ツイデニコレヲ持ッテケ」

「?」

ゴミか何かかと思って片手を出すと「落トスゾ」と言われた。渋々両手を出す。あ、ビールの缶ベンチの上だ。
後で拾わなきゃと思っている私の腕にウィーンと言って置かれたのは

「・・・・・・は?」

「生物ニハ興味ガナイ」

「いや、え?」

「焼クナリ煮ルナリ好キニシロ」

「あの、これって、まさか・・・」

頼む、否定してください。そんな願いをこの金属野郎は見事に打ち砕いた。

「宇宙人」

しかもすでにまるこげの。

「ジャアナ」

いつの間に準備したのか積んであった兵器もなくなり、UFOでそいつは帰って行った。お前が宇宙人なんじゃないの、本当は!
しかも重いわ!あとこれどうしろと!捨てろと!?遺体放棄で罪に問われるっつーの!!!

しばらく私はまるこげの宇宙人を抱きかかえたまま突っ立っていた。
おうちかえりたい。
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