ワンパンマン

□あなたと会えてよかった
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静かな日曜日の午後だった。

「暇だね、ボロス」

シオリがごろり、と敷きっぱなしの布団に寝転がった。
わずかに開いたカーテンから流れ込む柔らかな日差しが、彼女を美しく照らす。

「ああ、暇だ」

ボロスがパラリ、と本をめくる。
わずかに開いたカーテンから流れ込む柔らかな日差しが、彼を美しく照らし出す。

「ねえ」

彼女は布団に埋もれたまま、消えそうな声で言った。

「星、見に行こうよ」

「…どこへ」

「駅の方のプラネタリウム」

「…」

彼は本から視線を外さないまま、溶けそうな声で言った。

「…悪くない」


『星は、何千年、何億年、何万年とかけて、その美しい輝きを私たちに見せてくれるのです――』

天井に描かれた星。暗闇。息の音さえも憚られる、静かな空間。
どこか懐かしく、どこか悲しい。
そんな空間に、二人ぼっち。

「ボロス」

「なんだ」

「手をつないで」

「ああ」

『そこに見えるのが有名な夏の大三角。織姫と彦星が――』

悪くない、と二人は思う。
二人ぼっちでも悪くはない。



「面白かったね」

「それなりにな」

「あの星うちの何個にボロスは行ったんだろうね」

「…さあな」

「…あ、おまんじゅう。買ってこ」

「シオリ」

「なに」

「…なんでもない。それより日本茶の茶葉がきれてる」

「はいはい」

とある、休日の午後。

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