どうぶつ日和

□こんな寒い季節と言えど
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玲ちゃんと並んでのんびりと歩く。とりあえずの目的地は公園近くにある小さな屋台。学校からだと歩いて10分くらいかな。そのまま真っ直ぐ進んだ所に通学に使ってる駅があるから、その屋台の立地条件は最高。玲ちゃんと私に限らず、うちの学校の生徒の多くがそこで糖分補給してるみたい。勉強で疲れた時には甘いもの!って言うしね。ただ、調子に乗るとお腹のお肉が…うぅ。
ちなみに私の手は、さっきからずっと玲ちゃんのコートの中で温められています。時々きゅっと手を握られては、

「寒くない?」

と優しい声で玲ちゃんが顔を見てくるもんだから、私はというと、未だに出発時の逃がせずにいるばかりか、更に体温を上げながら小さく頷くしかないわけでして。何か今日の玲ちゃんイケメン補正かかってない?何なの死ぬの、私。

「……顔真っ赤ですけど」
「あー、あー、何でもないやい。うるさいやい」
「手もポカポカするし。カイロいらずだな〜」
「……!!!!」

ニコニコもニヤニヤも通り越してハッハッハと心底幸せそうに笑う玲ちゃんに、横から小さくタックルする。手を放してやろうと思ったけど、思いの外しっかり握られていて逃げられそうになかったから、仕方ないのです。
相変わらず笑う玲ちゃんと小さなタックルの応酬をしてるうちに、どんどん甘い香りが近づいてきた。お、これはちょうど焼きたてのにおいだ。

「いらっしゃい! あら、今日はずいぶん温かそうじゃない〜」
「体温高いんで温めてもらってます」

ニシシと笑いあう玲ちゃんと女の店員さん。その横から、女の店員さんと同じバンダナを巻いたおじさんがトングを片手に顔をのぞかせた。

「いいなぁいいなぁ、女の子は可愛くて。2人ともおっちゃんらの家来ない?」
「こらアンタ、セクハラしてんじゃないの」
「へいへ〜い……。で、嬢ちゃんら、今日は何にする?」
「えっと、私は焼き芋でお願いします!」
「アタシはたい焼きの抹茶を1つ」
「はい、それぞれ150円ずつね。両方出来立てだから火傷に気を付けて」

お金を払うために、握っていた手を放す。冷たい空気に少しびっくりしながらもお金を渡し、アツアツの焼き芋を手に受け取る。

「「ありがとうございます」」
「はーい!」「またおいでー!」

焼き芋で両手を温めつつチラリと玲ちゃんを見やる。彼女も同じくたい焼きで暖を取っているらしい……あ、違う。すっごい食べたそう、目がたい焼きから離れようとしない。

「玲ちゃん、食べないの?」
「いや、せっかくだからこの後で……いやでもお腹減ったし……いやいや……」

何かプランがあるらしい玲ちゃんは食べるか否かですごく迷っている模様。

「公園に何かあるの?」
「え、や、そういうわけでは……ええと」

とりあえず公園で何か企んでるのはバレバレですね。私は手に持った焼き芋を二つに割って片方を玲ちゃんに差し出した。

「半分こしよー玲ちゃん! 公園でたい焼き半分ちょうだいなっ」
「えっ、いいけど、いいの?」
「あれでしょ、今食べたら全部食べちゃいそうって思ってるんでしょ? 半分ずつ食べたらそうもならない! そしてお芋は腹持ちがちょっといい!」

と、ちょっとドヤ顔で力説する私に微笑みながら、玲ちゃんは私の手から焼き芋を受け取った。

「じゃー、ありがたくいただきます」

たい焼きをカバンに避難させ、ふーふーと息を吹きかけながら焼き芋を頬張る玲ちゃんがなんだか子供っぽくて可愛らしい。
彼女の左手が空いたので、すかさず自分の右手を絡ませ、再びコートのポケットに突っこんでやった。

「!?!?」
「人間カイロですよ〜、って、おやおや玲ちゃん、お耳が真っ赤ですぞ?」
「さっきの反撃か……!」

すっかり油断してたらしく、玲ちゃんの顔はあっという間に赤くなる。それでも手を放そうとするどころか控えめに握ってくるのがまた可愛らしくて、ご機嫌な私はそれに応えるように愛しい手を握り返す。それを何度も繰り返しながら、私たちは東側にある公園へと向かった。
 
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