どうぶつ日和

□こんな寒い季節と言えど
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私と同じくマフラーとコートに身を包んだ玲ちゃんと昇降口に行き、上履きからローファーに履き替える。一応まだ校舎内なのに、肌がピリピリと冷えていくのが分かる。ガラス製の玄関ドアから外を見ると、日が暮れてしまう寸前のようだった。カラスも山に帰ってしまっている、そりゃぁ寒いよね、あ、息白いや。なんてぼーっとしながら外へ向かう玲ちゃんに着いていく。

「……寒いね」
「ねー。あ、見て見て玲ちゃん、息白くなるよーっ」

はぁっ、と息を吐いてみせる。と、玲ちゃんも真似をして、はぁっと小さく息を吐いた。

「……ほんとだ、冬だねぇ」

くすくす笑う玲ちゃんがどこか子供っぽくて、やっぱりつられて笑ってしまう。寒さで赤くなったほっぺのせいだろうか。

「で?今日はどこでおデートするの?」
「デ……ッ! お散歩だってば……」
「玲ちゃんこっち見てよ〜」
「笑うな……あーもー、恥ずかし……」
「えへへ〜。いつもの公園にでも行く?」
「うん、今日はちょっとだけ、遠回りしようかな、と。甘いものでも食べながら、とか、どうかな」

せっかくのお散歩デートなんだし……ってぼそぼそ言ってるの聞こえてますよ玲ちゃん。というか、デートプランを押し付けずにちゃんとこっちの意見も聞いてくれちゃうあたり流石だなぁって思っちゃう。たまには強引でもいいのに、なんて思う反面、やっぱりその優しさに惚れ直しちゃうというか、あぁ好きだなぁって思わされちゃうから、玲ちゃんはなんだかズルい。

「甘いもの! 私焼き芋食べたい」
「言うと思った。途中でいつもの所寄ろうか」
「うん! ありがとーっ」
「寒くなったら言って」
「はーいっ。玲ちゃんも我慢しないでね」
「ん。じゃぁ、行こうか」

先に歩を進めた玲ちゃんに、後ろから軽く突撃して腕を組む。慌てるかな、とワクワクしていたら、瞬時に組んだ腕を解かれて逆にその手を玲ちゃんのコートのポケットに入れられてしまった。しかもちゃっかり恋人つなぎ。珍しく大胆な行動に内心こちらがあたふたしつつ、ちらっと玲ちゃんの顔を見上げると――

「……人肌恋しい季節ですからね」

――してやったりと言わんばかりのニヤニヤ顔。加えて、言い終わると同時に手をぎゅっと握るんだから、私はあぁやられたと思いつつ胸をときめかせてしまうしかないじゃない。
しかも、歩調は歩幅の小さい私に合わせてゆっくりめにしてくれてる。それも、他の人なら注意しないと気付かないくらいさりげなく。玲ちゃんのちょっとした悪戯心とか、散りばめられた優しさのかけらに触れる度に、私の心も体もぽかぽか温まっていく。

「……やっぱズルいよ、玲ちゃんは」
「何のことかなー」

喉でクックッと笑うのは彼女がご機嫌な証拠だ。
あー、今の私絶対顔真っ赤でしょ。もう。あっつい。
 
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