どうぶつ日和

□泣きたい時は泣けばいい
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「行ってきます」

小さく呟いてドアノブを回す。この声に返ってくる言葉は、今日も無い。

重いドアを閉め、鍵を掛け、ふと表札を見る。プラスチックの板に彫られた三人の名前。

「……もうアタシの名前だけでいいんじゃないの」

乾いた笑いが朝のマンションに少しだけ響く。
私の名前は志倉 玲。この名を授けてくれた二人の志倉さんとは、しばらく、いや、ずっと長い間会っていない。
 
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