どうぶつ日和

□こんな寒い季節と言えど
1ページ/4ページ

 
秋も深まりきり、さぁ冬だぞと北風さんがウォーミングアップし始める季節。
とは言いつつも、空調の聞いた教室は快適な室温に保たれていて、冬の「ふ」の字も思わせない。季節感、何それ?状態である。
快適な室温、そして窓から差し込む西日の暖かな光。この二つが私を眠りの世界に誘うのは難しいことではなく……ぐぅ。
おおっといけない……ぐぅ。といった感じで睡魔との格闘を繰り返しているうちに、放課を知らせるチャイムが静かに鳴り響いた。

「今日の授業おわり〜!」

腕を上に上げぐーっと伸びをする。授業からの解放感はたまらないね!…とはいえ、今からこの温かい教室を出て冷たい空気に触れなきゃいけないと思うと、ほんの少しだけ、帰るのが億劫になるわけでして、はぁ。
諦めのため息を小さく吐いて、椅子に掛けてある防寒用のコートに手を伸ばす。着るととっても温かいけど少しだけ重たいコートの袖に手を通していると、後ろから玲ちゃんの声がした。

「アキさんや」
「はーあーい〜」
「あのさ、今日は、その時間ある?」
「ん〜、オールグリーンだよ〜」

コートのボタンを留めながら、背中側に返事をする。何だかいつもの玲ちゃんにしては歯切れの悪い言い方だなぁ、と思いつつ、マフラーを手に取り振り返ると、そこには顔をほんのり赤くして照れくさそうにしている玲ちゃんが立っていて。

「よかったら、その、お散歩でもしませんか」

なんてもじもじしながらのお言葉。
「キス」は言えても「デート」は言えない、そんな口下手な玲ちゃんだから、デートのお誘いもほとんど私からだった訳であります。珍しいと思う気持ちが少し、残りの多くは嬉しさで心がいっぱいになったのは言うまでもないですね、はい。そういえば、私がうとうとしてる時って、いつもすぐ後ろの席から玲ちゃんがつついて起こしてくれるけど、今日はそれが無かった……ってことは、さっきの時間ずっと誘い文句で悩んでたの?え、ちょっと私の恋人さん可愛すぎでしょ。抱きつきたい衝動をぐっと抑え、その代わりに、とびきりの(きっとほっぺが緩み切ってる)笑顔で答える。

「もちろん!」

私につられたのか、はたまたほっとしたのか、それとも喜んでくれているのか。
同じくほっぺを緩ませてはにかむ玲ちゃんに、私はやはりほっぺを緩ませるしかないようです。
 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ