DOGS

□貴方が守りたかったもの...
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「……ねぇ、貴方も知っていたんでしょう?」


私の顔を見つめる目が、あまりにも綺麗だったから。

思わず、笑みが零れた。



「――さあ、何のことかしら?」

何も知らないわ、と言えば、直刀は眉間に皺を寄せて。

更に鋭くなる瞳に、私の笑みが狂気を含んでいくのが自分でも分かった。

「とぼけないで。あの人…冬峰が私の仇ではないと貴方は知っていたんでしょう?」

静かに、けれど怒りを含んだ声が、部屋の中に響く。

組んでいた足を組みなおすと、木製の古い椅子がギシリと悲鳴を上げた。

痛いくらいの沈黙が続く中で、その音は異様に大きい。

「…それが、冬峰の願いだったからよ」

「どういう意味?」

問い詰めるかのような声に、私は笑みを深くする。

それに比例して、直刀の顔も険しくなっていって。

この状況を楽しむ自分に、つくづく性格の悪い人間だと、心の中で自分を罵った。


「そのままの意味よ。

 冬峰は、もう一人の直刀に斬られた貴方を助けた。 ただそれだけ。

 理由なんて、知らないわよ。私は冬峰ではないんだから」


「…それじゃあ、貴方は何で私を助けたの。死んでもおかしくない状態だった私を助けたのは何故?」


「――なんででしょうね。私にも分からないわ」

「は…?」

私の答えに、直刀の表情が険しくなる。

だんだん機嫌を損ねていく直刀を見ていて笑顔が零れてしまう私は、きっとこの子を愛している。

両親を殺され、仇ではない自分を助けてくれたはずの男を何年も憎み、そしてその仇すら叶わなくなってしまった、哀れな少女を。

「でも…そうね。あえて言うなら、冬峰が連れてきた子だったからかしら」

「…」

「私はね、あの人を愛していたから。だからこそ、貴方を助けたのよ」

静かに私を見つめる直刀の目に、僅かに困惑の色が見える。

罪悪感でも感じているのかしら。

そんな必要、ないというのに。


「どうしたの?そんな目をして。私に対して申し訳ないとでも思っているの?」

「……」

冷たい視線を向ければ、直刀は何も返さない。


「…まあいいわ。貴方がもう一人の直刀を殺したいというのなら好きにしなさい。

 でも、これだけは約束してくれる?


 死ぬのは勝手だけど、貴方が死ぬのはその刀と同じものを持つ人間と戦った時だけだと。

 他の人間に殺されるようなことがあったら、覚悟しなさい」









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