DOGS

□空白の距離
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「ねえ、ハイネ……」

「あ?なんだよ」

伸ばそうとした手は、伸ばすことができずに。

ただ、言葉だけが口から零れ落ちた。



「昨日の仕事のとき、さ」

「ああ」

「銃が、壊れちゃったんだ」

「……はぁ?」

ぼーっと聞いていただけのハイネが、急に大声になって。

思わず耳を塞ぐと、不機嫌そうに睨みつけられた。

「どうやったら壊れるんだよ」

「うーん、なんでだろう…」

苦笑いをすると、盛大に溜め息が吐かれる。

そこまで大きな溜め息つかなくてもいいのに。

言いそうになった言葉は、しっかり飲み込んで。


「でね、お願いなんだけど――「見せてみろよ」」


その言葉にきょとんとしていると、僅かに頬を染めたハイネが手を差し出してきた。

「だから、見せてみろって言ってんだよ」

二度も言わすな、と不機嫌そうにハイネは言ったけれど。

思わず、笑顔が零れてしまった。


「…なんだよ?」

「ううん、ありがとう」

腰につけていたホルダーから、愛用のオートマチックを取り出す。

ハイネはそれを無言で受け取ると、黙々と修理を始めた。


「…ハイネ、大丈夫そう?」

「ああ、まだ使えるよ」

手際よく拳銃を解体したり戻したりする姿は、まさに職人のそれのようで。

思わず魅入ってしまう。


「火薬が詰まってたんだよ」

もうちょっと手入れしろよな、と呆れ顔で言いつつも、ハイネはよく私の拳銃を見てくれる。


「ねえ、ハイネ」

「ああ?」

「ありがとうね」


「…別に」


そっけなく返された言葉は、照れ隠しだと分かってる。


「今度、手入れの仕方教えてね」

「…気が向いたらな」


言い終わると同時に、ハイネが立ち上がる。

「それじゃあ、バドーが待ってるから」

「うん、仕事頑張って」


遠くでハイネを呼ぶバドーの姿が見えて、思わず笑顔が零れた。

本当に、あの二人は仲がいい。

…本人たちの前で言ったら怒られるけど。



こちらに背を向けつつ手を振ってくれるハイネの背中を見送りながら、手に持っていた拳銃を抱きしめた。


















(その距離がいつか埋まることを、ずっと信じてる)












***

ハイネは、自分で銃の手入れをしてたらいいよなぁ、と思います。
いろいろ間違ってる感が漂ってますが、突っ込まないでやってください(汗)

あと、名前変換がなくてスミマセン…。




071006

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