ネガイ屋キラボシ堂
□第一話 娘のネガイ父のオモイ
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夢人「ソメイヨシノ…」
紡「俺も聞いた事あるな。確か…この世の中にあるソメイヨシノは全て同じで、家族だとか何とか…」
桜「ど、どういう意味?」
夢人「ソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒガンの雑種で元は一本の木なんだ…だからここにあるソメイヨシノもそこら辺に咲いてるのも元は全て同じ一本の木から出来てるって事」
感心する桜
桜「…詳しいね」
夢人「別に…次行くよ」
桜並木を歩く三人
呟く桜
桜「…綺麗」
桜「これもみんな家族なんだ…」
夢人「…桜の木だって親の木から離されても立派に育ってるのに、アンタはまだ寂しいとか思う訳?」
黙る桜
桜「………」
桜の木を見上げながら坦々と言う夢人
夢人「…過去の果たせなかった約束と自分のネガイにばかりこだわってたら、父親のオモイにも気付かなくなるよ」
桜「お父さんの…想い…?」
夢人「…桜は必ず毎年咲く。そして人はまた新しい芽吹きの始まりを予感する……それなのに同じ名前を持つアンタが咲く事を止めてどうするの?」
夢人「アンタの父親はどんなネガイでアンタにその名前をつけたの?どんなオモイで毎年桜を眺めていたの?」
夢人「アンタは父親のオモイを叶えなくていいの?」
桜の木を見上げる桜
桜「お父さん…」
桜の木に告げるように言う桜
桜「お父さん、心配掛けてごめんなさい…桜は、もう寂しいなんて言わないよ…」
桜「頑張って、来年も再来年も…お父さんに届くように、綺麗な花を咲かせるよ」
二人の方を見て微笑む桜
桜「ありがとう、二人共…私はもう大丈夫!来年からあの高校に入ってあの桜の木と一緒に大きくなるから!」
頷く紡
紡「あぁ、そうだな…お嬢さんは一人じゃない。桜の木も味方してくれるし、それに…」
遠くから桜を見つけて走って来る友達
桜の友達@「桜ぁ〜!!」
紡「心配してくれる友達もいるしな」
また一つ微笑む桜
桜「うん…っ」
桜「あ、そう言えばあの…名前…」
夢人「…ネガイ屋」
夢人「僕たちはネガイ屋だよ…」
桜「願い…屋?」