押し花のしおり

□強いくせに、
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僕は目の前にある大きな塔を見上げた。
「うわー…首が痛くなりそうです…」
「………」
「…パルテナ様?」
僕はさっきからずっと聞こえない声の主を呼ぶ。
「…え、あぁ。ごめんなさい。」
考え事をしてたわ、と焦った様子で答えた。
「…なにか、気になったことがおありなんですね?」
僕が言うと少しの沈黙の後、静かな声が返ってきた。
「…いつも、こんなにのんびり話してましたっけ?」
…確かに…
いつもなら先に進ませまいとしてたくさんの敵が次から次へ出てきて殲滅がとても大変だ。
しかし、今日はのんびり話をするくらい敵が少ない。
…いや、いない。
「どういうことなんでしょう?」
僕の頭に一つの危険信号が点滅する。
「…あっ!僕のいない間にエンジェランドを攻める作戦なんじゃ!?」
「落ち着きなさい、ピット。」
僕があわて始めるのを見てパルテナ様がぴしゃりと言い放つ。
「エンジェランド周辺にはそのような軍は来ていません。安心してください。」
僕は、よかった…と胸をなで下ろした。
パルテナ様は心配した声色で言った。
「危機があるとすればあなたにです。このまま帰ってきてもいいのですよ?」
僕は大きく首を横に振った。
さすがにこのまま帰るわけにはいかない。
「いいえ!さっきも言ったように罠でも突き通って見せます!だから、大丈夫です!」
僕は自信ありげに胸を張る。
パルテナ様は少し安心したように言った。
「さすがピットです。じゃあ、よろしくお願いしますね。」
「はい!」
僕が元気に答えると、パルテナ様は、ですが…と続けた。
「危ないと判断したら帰ってくるのです。いいですね?」
「わかってます!」
僕はそう断言すると、塔の中へ入った。
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