黄色のしおり

□依頼状という名の招待状
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「暗っ!?」
バタンッと扉が閉まった後、アミティが叫んだ。
確かに暗い。
今が昼間であることを忘れるくらいに。
窓がないわけではないが、すべての窓に木の板が打ち付けてあって外の光を遮断しているため部屋の中は夜のように暗かった。
「……依頼主はどこだ?」
シェゾがそう言って周りを見渡す。
確かに依頼主どころか人の気配もしないが……
「……ひっ……!」
小さい悲鳴が聞こえた。
その声がした方を振り向けばアミティがシグにしがみついて目を閉じながら震えていた。
「……どうしたの?アミティ。」
シグが心配そうにアミティを見る。
「いっ、今、そこに何かっ……!」
「何か?」
アミティの指差す方向を見るが何もない。
「何もないよ?」
「え……?」
アミティは驚いたように目を開いてその場所をみた。
「ほんとだ……」
「こんな暗がりの中だ。何かと見間違えたんだろう。」
シェゾがちゃんとフォローする。
なかなかいいところあるじゃないか。
確かに怖いと思えば思うほどないものを見間違えることがあるらしい。
僕も少し怖いけど、頑張らなくちゃ。
「とりあえず依頼主の人探す?」
「あぁ、そうだな。」
そして皆で奥へ進んでいった。


「……ねぇ、シェゾ?」
「なんだ。」
「この道、長くない?」
「……むぅ、そうだな……」
僕らはひたすら奥へ進んでいた。
しかし、いつまでたっても依頼主は見つからない。
見つからないどころか、ひたすら歩いているのにまだ奥にたどり着かない。
確かに大きい屋敷だと思ったが、もう1キロほど直進していている。
ここまで大きな屋敷ではなかった。
これは……
「完全にはめられたな、これは。」
シェゾがめんどくさそうにぼそっと呟く。
「え、えぇ!?そうなの!?」
アミティが驚いたように声をあげた。
アミティは相変わらず怖いようで、初めから今までずっとシグの腕につかまったままだった。
「……ご、ごめんね、みんな……」
僕が立ち止まるとみんなも立ち止まってこちらを振り向いた。
「なんのことだ?」
シェゾがわからないというように首を傾けた。
「だ、だって僕のせいでこんなことにまきこんじゃって……」
僕はうつむきながら言う。
「そんなことないよ!」
突然アミティが僕の手を取ってその手で包み込んだ。
「あたし達はあたし達の意思で来たんだよ。アルルのせいじゃない。」
それに、とアミティはニコリと笑った。
「みんないるから大丈夫!すぐにこんなところから抜け出せるよ!」
ね?と心配そうに僕の顔をのぞき込んだ。
「……そうだぞ、俺を呼んでおいてここから出られないなんてことは絶対ない。」
だから、大丈夫というようにシェゾは僕の頭をかき回した。
「……うん、そうだよね!ありがとう!」
僕がそう言って笑うとアミティとシェゾは満足そうに笑った。
その中で何故かシグは何かに集中するように一点を見つめていた。
「……シグ?どうしたの?」
僕が聞くとシグはゆっくりとこちらを向く。
その顔はいつものようにボーっとしている顔ではなかった。
「……何か、何かいる…… 」
「へ、変なこと言わないでよ!シグ!」
「でも、いる……」
そう言って僕らのきた道の奥を見ていた。
またアミティが震え出す。
僕にもその震えが移ったように微かに震えた。
そして僕はシグの見る方向を恐る恐る見た。
「……………え……」
かすれたアミティの声が耳に入る。
しかし、僕の目は「それ」から離れなかった。
そこには青白い肌の髪の長い少女が佇んでいた。
……僕でもわかる。
何かがおかしい。
普通の少女からは感じられないような魔力。
そしてその赤く光る瞳。
それらは僕らに恐怖しか与えなかった。
…………怖い、足が動かない。
その少女はこちらに来ることも逃げることもない。
ただこちらを見ていた。
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