緑のしおり

□揺れる影~5~
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神殿の前につき、息を整える。
その大きな扉を体全体を使って押しあけた。
ギギー、と重い音が神殿内に響き渡る。
二人が中にいることを祈りながら中に入る。
扉が閉じるのと同時にすすり泣くような声が聞こえた。
その声は過去に植えた木のある所から聞こえてくるようだった。
そうっ、とその場所を覗く。
「……バド?」
僕は大きな背中を見てつぶやく。
すると、その背中が素早くこちらを振り返った。
そこには、目を真っ赤にしたバドの驚いた顔があった。
「…リンク…!」
僕は安堵してバドの近くに行った。
「無事で良かった!家が水浸しだったからすごく焦ったけど…」
すると、バドは悲しそうな笑顔を浮かべた。
「…あ、あぁ…」
僕はもう一つ聞きたかったことを尋ねた。
「ねぇ、バド。ゼルダはどこにいるの?」
僕が言った瞬間、バドの肩がびくっ、と震えたのが見えた。
そして、言いづらそうにしゃべりだした。
「……ゼ、ゼルダは…」

「さらわれちまった…」

「……え?」
ちゃんと耳に届いたはずなのにその言葉を理解できない。
理解したくなかった。
「……すまない」
バドが僕の前で頭を下げる。
「……どう、して…」
僕はかすれる声を振り絞ってだす。
バドは肩を震わせながら言う。
「…ゼグニスが来たんだ。」
「でも、ドアは開けないでって…」
「…警戒はしてた。だけどノックがあった後、誰かって聞いたら…」

「自分はリンクだって言ったんだ。」

僕の頭が真っ白になる。
口が渇き、喉を通る息がヒュー、と音を立てた。
「ゼルダは迷わずドアを開けた。そしたら…」
バドは拳を握りしめ、黙ったままだった。
僕も耐えられず、ひざをつく。

…どうして気づかなかったんだろう。
もっと考えればこんなことにはならなかったはずなのに…

頭の中がぐるぐると渦巻き、自然と手に力が入る。
気がつけば息が短くなっていた。
「…はっ…う…」
「リンク?」
今まで俯いていたバドが顔を上げ、僕の様子に目を見開いた。
「お、おい、リンク!」
「…ぁっ…はっ…!」
「過呼吸!?しっかりしろ!」
バドが僕の背中をなでる。

どうすればいい、僕は。
ゼルダを連れて行かれてしまうのは二度目だ。
どうして、こうなってしまう…
でも、前はこんな事考えなかったな。
すぐにでもゼルダを助けたくて走り出していた。
それは今も同じ。
ならば、走り出さなければ。
こんな事をしている場合じゃない。
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