緑のしおり

□揺れる影~4~
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「……え?」
開いたままの口から気の抜けた声がもれる。
さっきまで乾き気味だった目を何度もこすった。
「……緑が…」
なんと、驚いたまま立ち尽くす僕の目の前には草がたなびく平原が広がっていた。
背の高い木はないが、小さめの木ならたくさんあるし川まである。
以前は水も植物もない砂漠だったということことが嘘のようだ。
………いや、それは違う。
僕は小さな範囲だが一瞬で砂だけの土地が草花のある土地になるのを見たことがある。
時空石の力で。
「……ねえ、ファイ。」
「なんでしょう。」
僕の問にファイがマスターソードから姿を現す。
「時空石をたくさん集めて一気に全てを起動させたらこれぐらい広範囲を変えることはできるかな?」
「マスター、それができる確率は85%。時空石を探すことを推奨します。」
僕はマスターソードにファイが戻るのを確認し、以前来たはずなのに初めて来た感じのする平原を歩き始める。
草の香りや水の音。
木の少ないフィローネの森のようである。
川に沿って歩いていると少し広い湖があった。
遠くだからあまりよくわからないが動くものがあった。
さらに近づくとその形がはっきりと見える。

……人…?

よく見ると色は灰色だが、僕と同じ騎士学校の制服を着ている。

なんで人がこんなところに…?
いや、ゼグニスの手先かも知れない。
慎重にいかなければ。

その人物は湖の水面を眺めていた。
僕がその人物のそばで立ち止まると僕に気づいたのか、振り返りはせず顔を上げた。
「こんにちは、リンク。」
「え?なんで僕の名前…?」
その人物はだって、と戸惑う僕を振り返る。
「僕は君だもの。」
「……っ!!!」
振り返った目の前の人物の顔はまさに鏡に映した僕であった。
髪の色は灰色だし、目の色も紫色だけど、僕の顔とうり二つである。
「正しく言えば君の細胞の一つ、かな。」
「どういうこと…!?」
僕に似た目の前の人物は僕の様子を面白そうにうかがう。
「フィローネの森で君の中に入った個体があっただろ?それは君を操ることは出来なかったけど、運良くくっついた君の小さな細胞と融合した。」
その人物がニタリと笑うと僕の背中にぞく、と寒気が走る。
「そう、それが僕。」
「……!」
「名前はないんだけど……そうだな、ダークリンクとでもよんでよ。」
ゆったりとした口調で言うけれど、彼は僕の敵のようだ。
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