黄色のしおり

□依頼状という名の招待状
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~アルル視点~

「ここが……?」
「……らしいな。」
僕の問いにシェゾが答えた。
僕らは目の前にある大きな洋館を見上げ、息をのむ。
「す、すすすすすごく、か、変わってるお屋敷だねー!」
アミティが明らかに震える声でとなりのシグに言った。
「…………めんどう。帰る。」
「ま、まってよシグ!一緒に行こうっていったじゃん!」
「うー……」
きびを返し帰ろうとするシグの腕を掴み、アミティは必死に抵抗する。
シグはめんどくさそうな顔をして、しかし、帰ることは止めたらしい。
アミティは怖がっているけれど、シグは怖いとかじゃなく、本当にめんどくさいと思ってるようだ。
まあ実際、この二人とシェゾには全く来る意味が無いわけで……
めんどうと言われると誠に申し訳ない……
シグはただ思ったことを口にしただけなんだろうけど、僕の胸にぐさっとその言葉が突き刺さった。
その理由は少し前に僕の家に届いた依頼が発端である。



その依頼状にははっきり言ってしまうとものすごく下手な文字がぎっしり書いてあった。
なんでも光の魔導師である僕の力を借りたいのだとか。
残念ながら今、カー君はカレーの食べ過ぎで寝込んでいるため一緒に行ける人がいない。
でも、こんな字を書くような人に一人で会いたくないし…………
だから不本意ではあるが頭に浮かんだ人に一緒に来て欲しいと頼むことにした。

「……………で、なんでオレなんだ。」
訳を説明した僕を不機嫌そうにシェゾは見て言った。
「お願いだよ、シェゾ!報酬の半分はあげるからさ!」
「半分って……。いくらなんだ、それ?」
シェゾはそう言って僕の持っている依頼状を僕の手から奪った。
そして一通り目を通したらしく、その目を大きく見開いた。
「は、はぁっ!?なんだよこの額!?小さい家が買えるぞ!」
そう言って僕にその依頼状を押し返した。
「お前なんかだまされてるんじゃねーの?」
「でも、本当の話だったらすごいでしょ?シェゾ強いし、一緒に来てくれたら頼もしいからさ!」
僕は両手を合わせてシェゾに頭を下げる。
でも、シェゾは相変わらず不服そうな顔でこちらを見ていた。
「そいつに騙されるような間抜けなやつと思われるのはごめんだ。」
「そこをなんとか!」
「あれ?アルルとヘンタイさんだー!」
突然後ろで声が聞こえた。
振り返るとそこには嬉しそうにこちらに向かって手を振るアミティと、相変わらずぼー、としているシグがいた。
「へ、ヘンタイって言うなっ!」
すかさずシェゾがツッコミをいれる。
「何話してるの?」
「あ、実はね……」
シェゾに言ったように説明するとアミティは嬉しそうに手を叩いた。
「わあ、おもしろそう!あたしも行っていい?」
「え!?来てくれるの!?」
「うん!シグはどうする?」
僕が驚いていると、アミティは隣のシグに聞いた。
「うーん、アミティが行くなら行くー。」
「わー!二人ともありがとう!」
「じゃあ、さっそくいってみよー!」
アミティの掛け声とともに僕たちは歩き出した。
「え、ちょっ、俺は!?」
シェゾの声に振り返り首をかしげた。
「え?アミティとシグが来てくれるから、君はいいや。」
「ま、まて!俺を置いていくな!」



そして、今に至る。
結局シェゾもついてきた。
シェゾがいれば頼れるのでありがたい。
まさか訪ねなきゃいけないのがこんな明らかに幽霊が出ますって感じの屋敷だとは思ってなかったし。
まあ、四人もいれば騙されていたとしても、なんとかなるだろう。
「………行く?」
「ここでぐだぐだしても仕方ないだろ。いくぞ。」
僕の躊躇いがちな問いを聞いてか聞かずか、シェゾはそう言ってなんのためらいもなく大きな扉をあけた。
「あ!待ってよシェゾ!」
「シグ!行こ!」
「うーへー。」
やる気のないシグの声を背中に受けながら僕らはその屋敷に入った。
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