黄色のしおり

□熱い。
1ページ/3ページ

「熱い…」
朝起きた瞬間そう思った。
今は冬。どうして熱いのか。
…わからないのならしょうがない。
今日は虫取りにアミティと一緒に行く約束があった。
いつものように支度をして家を出る。
何も食べられる気がしないので朝食は食べなかった。

…やっぱり少しおかしい。
歩くだけですごく疲れる。
くらくらする頭で約束の場所へ行った。

「もー!シグ遅刻だよ…ってなんか息荒いけど大丈夫?」
「はぁ……ごめん、大丈夫…」
約束の場所につくとアミティが少し怒っていた。
時間に間に合わなかったらしい。
それも、早く歩けなかったせいだろう。
確かに今日はすぐに息があがった。
…なぜかはわからないが…
「本当に大丈夫?顔真っ赤だよ?」
アミティがそう言って顔をのぞく。
大丈夫ともう一度言うと、アミティは不満げな顔をした。 
「…そう?じゃあ、行こっか!」
そう言ってふたりで歩き出した。

いつもの虫取りするところに着いた。
普段ならあちこち駆け回って色んな虫をさがす。
アミティが一緒ならその好奇心が何倍にも跳ね上がる。
しかし、今日はどうしてもその気持ちが起こらなかった。
アミティが先を歩きながら言う。
「シグはいつもなら私をおいていくほど早足なのに今日は遅いねー」
こちらを振り返らずに笑った。
足が、動かなかった。
アミティの背中が離れていく。
左手を、その背中にのばす。
「…アミ、ティ…」
重心が崩れ前へ傾いた。
そして、そのまま闇へ沈んだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ