青のしおり

□青い髪紐の金色の輝き
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今日は特にする事もなく姫様にお茶を淹れながら雑談をしていた時であった。

「だ、だめです!」

姫様がいきなり叫んだ。
予期しなかった大声に私の心臓が跳ね上がる。
お茶を淹れていた手元のカップがカチッと小さな音をたてた。
姫様がなぜか頬を膨らませている。
「ひ、姫様…?」
「どうしてせっかくのばした髪をきるなんて言うのです!」
姫様はそう言って私を睨んだ。
髪はのばしていた訳ではなく、きるのがただ面倒だったからで深い意味はなかった。
女性のしなやかな髪ならまだしも、私のはねきった髪をのばしてもどうにもならない。
「このままだと鍛錬の邪魔になりますし…」
私が言葉を濁してそう言うと、姫様はまだ私を睨んだまま言う。
「では、せめて結べる長さまでにしてください。」
「それでは、今とあまり変わりませんよ…」
私が姫様の前にお茶を置きながらそう言うと、姫様は私の髪に手をのばした。
姫様は手に取った髪をまじまじと見る。
「わたのようで可愛らしいのに…」
もったいないわ!と姫様が勢いよく顔を上げた。
私と姫様の視線がぶつかる。
そこで初めて鼻がつきそうなほど顔が近くにあることに気がついた。
「わっ…」
「ご、ごめんなさい、青舜!」
姫様が慌てて後ろへさがる。
いえ、私こそ…と言葉を続けようとしたが姫様の言葉に遮られた。
「良いことを思いついたわ!」
「良いこと…ですか?」
私が首をかしげると姫様がええ、と笑顔を見せる。
「少し待っていてください、青舜。」
姫様はそう言うなりぱたぱたと部屋を出て行ってしまった。
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