青のしおり

□情けない。
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「はあぁ…疲れた…」
鍛錬を終えた私、李青舜は自室の扉を押し開いた。
背負っていた双月剣を壁に立てかけ、近くにあった布団に倒れ込む。
…いけない、このままだとそのまま寝てしまいそうだ。
重いからだをなんとか起こし、姫様に読んでおくようにと渡された書類を確認する。
しかし、頭は寝たままで読んでも読んでも内容が理解できない。
「……水を、もらってこよう…」
ゆっくりと立ち上がり扉へ歩き出そうとした、その時。

ゴトッ

隣の部屋で何かが落ちたような音がした。
隣の部屋は自分の小さな物置部屋になっていて、この部屋からしか入れない。
故に、人がいるとは思えない。
「…ねずみでも出たかな…」
独り言をつぶやき一応確認しに行ってみる。
小さなそのドアを開くと相変わらず様々な物が適当に置いてある。
「…あ、これか。」
床に、小さめな金属製の像が落ちていた。
何気に重かったので両手でそれを拾う。
近くに自分の背丈ぐらいの棚があった。
きっとその上から落ちたのだろう。
…しかし、なぜ?
私が両手で持たないといけないくらいこの像は重いのに、ネズミなどが落とせるのだろうか。
わざわざおとす必要もない。
はて?と首をかしげた。
そのとき、物陰から何かが私にむかって襲いかかってきた。
「…っ!!!?」
とっさに像を手放し、後ろに重心を傾ける。
すんでのところでよけることができたが、その勢いでバランスが崩れ床に背中を打ちつけた。
「うっ!……っ!!!?」
私がうめくと同時に耳元でガッという音が聞こえた。
しかし、それを確認する前に私の目に信じられない物が映った。
「………久しいな、青舜。」
「…呂斎…っ!!!?」
そこにいたのは、ついこの前反逆者として捕まったはずの呂斎であった。
「な、なぜお前がここにっ!?」
「おまえ達を殺さない限り死んでも死にきれないんでね。」
牢屋を抜け出してきた、と呂斎の顔に憎しみの笑みが浮かぶ。
さっきの耳元での音は呂斎が持っている小刀が床に突き立てられた音であった。
「さっきの像はお前が…?」
私の頬を冷や汗がつたう。
「お前は自室で武器を必ず手放すだろう?」
「ま、まさかそのために!?」
私は自室で武器を壁に立てかけた事を思い出した。
「武器を持たれてはやっかいだからな。…さて。」
一通り話し終わると呂斎は嫌な笑みを浮かべる。
「一思いに死なせるきはない。死ねるのは散々いたぶった後だ。」
どこから切りつけてやろう、と呂斎が私を見ながら笑う。
今すぐこの状況をどうにかしたいが、押し倒されている状態では逃げることができない。
「まずは、腹か…!」
小刀が振り下ろされる。
呂斎の下で出来るだけ体をそらすが、私のわき腹に剣が沈んだ。
「ぐあっ!!!」
激痛が全身をかける。
みるみるうちに床が赤く染まっていく。
「さあ、命乞いしてみろ!助けてやらないがな!」
呂斎は勝ち誇ったように高笑いをする。
「はあっ…誰が、命乞い…などっ…!」
命乞いをするつもりはないが、死ぬわけにもいかない。
どうにかこの状況を回避しなければ。
…そのとき、ガチャッと隣の部屋の扉が開く音がした。
「はあっ…はあっ…んぐっ!?」
音がしたとたんに呂斎の手が私の口を塞ぐ。
助けを呼ばれると思ったらしい。
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