緑のしおり

□あなたの隣に。
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「…あなたが好きです。ラヴィオ。」
「……え…?」
「私を一番近くで支えてくださいませんか?」

トライフォースの戻ってきたロウラルにはすぐにとは言えないが平和が戻ってきた。
ハイラルのゼルダ姫やリンクには感謝してもしきれない。
ほとんど無人になったロウラル城に兵士達が戻ってきて、町にも活気がでてきた。
そんなロウラルの風景を自室のバルコニーで眺めながら隣にいるラヴィオを見つめる。
ラヴィオはトライフォースがロウラルに戻ってきた日から、以前のようにロウラルのために城で働いてくれていた。
ハイラルで稼いだというお金で橋や家を作ったり、その足でロウラルの様々な場所の状況を見に行ったり。
時には背に背負う剣で魔物を倒したり。
そのせいで彼に怪我をさせてしまいそうでこちらがひやひやしたりしていた。
そんな彼にこの気持ちを持ち始めたのはもっとずっと前だった気がする。
「あなたも知っているとうり私は未熟者で間違いばかりです。ですがあなたと一緒なら乗りこえていける気がするのです。」
私はそう言い、ラヴィオの手を両手で包み込む。
するとラヴィオの肩がぴく、と震えるのがわかる。
ラヴィオはしばらく黙った後、その口を開いた。
「……お気持ちは嬉しいです。ですが、ヒルダ様にはもっと他にふさわしい方がいらっしゃるはずです。」
そう言ってラヴィオは私の手を柔らかくほどく。
「…ですから、その…、すみません…」
最後の方は聞き取れないほど小さい声で呟く。
その声は私の心臓の音でかき消された。
「…そ、う…」
私は必死に言葉を絞り出した。

断られてしまった。
嫌われてしまったかもしれない。
いや、むしろ最初から嫌いだったのかもしれない。
ラヴィオは優しいから、ずっと我慢して…

「で、では私は町の市場に行く約束がありますので!失礼しますねっ!」
「あっ…」
ラヴィオはそう言ってぱたぱたと部屋を出て行った。
彼の姿が見えなくなった瞬間足から力が抜けてその場にぺたりと座りこむ。
瞳から音もなく涙がこぼれ落ちた。
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