緑のしおり

□揺れる影~6~
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「ギ、ギラヒムッ…!?」
「ふん。」
数秒間沈黙が続く。

なぜ、ギラヒムがこんなところに…!?
ゼグニスの仲間になったとか…?
それとも、この期に僕を殺そうとか…!?
どんな理由であれ、僕の今の状況が危ないのは確かである。
僕は今盾も剣もなく丸腰で、しかも左手がつながれている。
戦うなどとなれば一瞬で負けるだろう。
剣はもちろん、盾と薬も常備で退けてきた存在なのだから。
僕が身構えていると、ギラヒムはまた鼻を鳴らす。
「だから、助けに来てやったんだよ!もっと感謝しろ!」
「は…?た、助け…?って、うわっ!」
僕がぽかんとしているとギラヒムはこちらに向かって何かを投げた。
長細いそれをギリギリ受け止めて正体を確認する。
「マ、マスターソード…!?」
「…あの巫女に届けてくれと頼まれたんだよ。」
「ゼルダに…!?」
僕はマスタソードとギラヒムを交互に見る。
「私にその剣を差し出してリンク君に渡してくれってね。」
「……!」
「ゼグニスを倒すにはこの剣を使わなくちゃならないらしくてね。だから、私がじきじきに届けに来てあげたんだよ。」
ギラヒムはそう言ってパチンと指を鳴らす。
すると、僕の左手首の鎖が音をたてて床に落ちた。
「まったく、私の前に巫女が現れたときは殺してやろうと思ったけどね。それがなきゃ倒せないなら話は別だ。」
ギラヒムは僕に背を向けながら言った。
「…あ、ありがとう!」
「勘違いしないで。君は魔王様を倒したんだから、私が君を殺すまで負けられては困るんだよ。」

「…君こそ勘違いしないでほしいね。」

突然声が聞こえたかと思うと、床の水が盛り上がり人の形を作った。
「ここに来て生きて帰れると思ったのかい?」
僕とギラヒムの間に長髪の男が立っていた。
「ゼ、ゼグニス…!」
僕が呟くとギラヒムがゼグニスを睨みつける。
「…魔王様を裏切ったくせによくのうのうと生きていられるものだね。」
「君も魔王を倒した勇者に手を貸しているじゃないか。」
ギラヒムは呆れたように揃った前髪をはらう。
「リンク君にお前を消させて、それから私がリンク君を消せば効率がいい。それだけだ。」
「…どちらにしろ君はここで死ぬ。それとも、私のコレクションになりたいかい?」
ゼグニスがそう言いながら両腕をあげると、水が床から噴き出すように溢れた。
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