緑のしおり

□揺れる影~5~
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「…え……?」
ドアノブを握っている手に力が入り、足が震えだす。
「…何…これ……」
目の前の状況にただ、立ちすくんだ。

僕はナリシャ様に会った後、いったん家に帰ろうと地上に戻ってきた。
おなかも減ったしゼルダに何か食べ物を作ってもらおう、とのんきなことを考えながら。
日が落ちてきて、暗くなり始めたころ、僕は家に着いた。
家に灯りはついておらず、不思議に思いながらドアノブをひねった。
元気に、ただいまを言おうとした口は大きく開いたままかたまる。
家の中の状況に目を疑った。
部屋は、荒れ果て水浸しになっていたのだった。

震える足を必死に動かし、少ししかない部屋をすべてまわる。
しかし、どこにもゼルダとバドの姿はみえない。
最初の部屋に戻ると、僕の足から力が抜け床にへたり込んだ。
二人は無事だろうか、とか何か手がかりはないか、とか考えが頭に浮かぶが足が動かなかった。

………守ると決めたのに…

拳を作り床をたたく。
そんなことで何も解決しないのはわかっているが、悔しくてたまらなかった。
床にたたきつけた手に冷たい水が…

…冷たい?

「あれ、暖かい…」
確かに僕の手についた液体は少し暖かかった。
この森は水がたくさんあるため夜になるとすごく冷える。
長い時間放置されたら冷たくなるはずだが…
「……もしかして」
僕は手についた液体を少しだけなめてみた。
「甘じょっぱい…」
これはゼルダがよく作るスープの味だ。
つまり、ここで何かが起きたとき、二人は食事中だった。
そのときのスープが床にこぼれ、放置された。
この床にこぼれたスープがまだ暖かいということはまだそんなに時間はたっていない。

…今からでも追いかければ間に合うかもしれない!

僕が素早く立ち上がるとファイがマスターソードから姿を表した。
「マスターに報告。」
「何?」
「ドアの周辺に足跡を確認。」
それを聞いて僕がドアの辺りを見てみると確かに少しぬかるんだ地面に足跡がついている。
「この足跡が神殿に続いている可能性80%。追跡を推奨します。」
「もちろんだ!」
僕は全速力で走り出した。
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