緑のしおり

□揺れる影~3~
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僕は夕焼けのオレンジ色の光に照らされながら自分の家に向かって歩いていた。
足も重たかったが、久しぶりに泳いだせいか身体全体が疲れているようだ。
そんなことを考えているうちに自分の家が見えてきた。
「なんか安心して眠くなってきた…」
あくびででた涙を指でさっと拭い、目の前のドアを体で押すように開く。
「ただいまー……ってうわ!?」
「リンク!おかえりなさい!」
ドアを開けた瞬間、突然何かに突進されしりもちをつく。
予想はついているが、それをみると嬉しそうに笑うゼルダが目の前にいた。
「あの…ゼルダ…?」
「怪我とかしてない?大丈夫?」 
ゼルダは戸惑う僕を見つめて言う。
「う、うん、大丈夫なんだけど…その…」
「何?」 
「ち、近い…かなって…」
ゼルダは鼻と鼻がくっつきそうな近さに初めて気がついたように驚いた。
「ご、ごめんなさい!気づかなくて!」
ゼルダはばっと引き下がり恥ずかしそうにうつむいた。
その後思い出したように顔を上げた。
「そ、そうよ、リンク!夕食を食べてたの!」
ゼルダは一緒に食べましょう、と僕の腕をひいた。
家に入るとバドが料理を口にほうばっていた。
「おう、リンクおかえり!」
「ただいま、バド。」
僕は剣をテーブルに立てかけて椅子に座った。
「んで?どうだったんだ?」
「うん、それなんだけど…」
僕は一つ間をおいて話し出す。
「水龍様はゼグニスに捕まってて…」
「ほ、本当に!?」
「大丈夫なのか!?その、水龍様ってやつは?」
ゼルダとバドの顔に驚きがうかぶ。
「大丈夫、僕が助けたよ。」
僕がそう言って頷くとゼルダは心底安心したように胸をなで下ろした。
「それでね、やっぱりこの森はゼグニスの支配下になっているみたいなんだ。」
「…じゃあ、ここも危ないんじゃないか?」
バドが真剣な顔で言う。
「水龍様がこの地を取り戻すって言ってたから、ここにいるのは大丈夫だと思うけど…」
「けど?」
「完全に安心できるわけじゃない。遠出は危ないし、特に水辺は危険だ。」
僕が言うとゼルダはどうして?と首をかしげる。
「ゼグニスは水のある場所にいることが多いんだ。」
「スカイロフトでも水の中から現れたしな。」
バドはそう言ってお茶をすすった。
僕はそれに頷いて話を続ける。
「だから、二人は極力外に出ないで。それから、誰が訪ねてきてもドアを開けないでほしいんだ。」
僕がそう言うとゼルダはでも、と口をはさんだ。
「知っている人ならいいんじゃない?」
ゼルダの言葉に僕はいや、と首をふる。
「ゼグニスは操った者の記憶まで見れるみたいなんだ。だから、ゼグニスが僕らの知っている人物になりすまして訪ねてくる可能性がある。」
「まじか……」
バドはあごに手を当てうーん、とうなった。
「……わかったわ。でも。」
ゼルダは頷いた後、僕を見据えて言う。
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