緑のしおり

□スマブラ世界へ~3~
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「…ってことはソラは最初の勇者なのか…?」
トワが首を傾げる。
「…いえ、もう一人いたわ。とても勇敢な人でした…。」
ゼルダがうつむきながら答える。
…今はハイリア様だ。
そんな気がする。
「まあ、どちらにしても先輩なら安心して任せられるな。」
トワが少し寂しそうに言う。
…任せられる?
僕はゼルダと顔を見合わせた。
「…えっと、任せるって?」
「あれ?ここに参加しに来たんじゃないのか?」
僕が聞くとトワが目を丸くして答える。
…そうだった。
話が大きすぎて本題を忘れていた。
「そ、そうだった!…それで、ここは何をするところなの?」
トワは僕が言うのを聞くと、知らなかったのか、と話し始めた。
「ここではいろんな世界の強者たちが戦うところなんだ。もちろん本当に傷つけたりはしないさ。俺や姫もここに参加してるけど…」
ひとつ区切って寂しそうに笑う。
「ソラ達が参加するなら俺たちは元の世界に帰る。」
「ど、どうして?」
ゼルダがすかさず身を乗り出して聞く。
「ここに同じ人物はいらないってことさ。」
…そういうことだったのか…
さっきの人達の目線はやはり、歓迎ではなかった。
トワ達がいなくなるから、新しい人はいらない、とそういうことだろう。
皆に好かれているんだなと思うと、とても微笑ましかった。
僕はひとつ気になったことがあってゼルダ姫と目を合わせる。
「あの、ゼルダ姫もここで戦っているんですか?」
「ええ、そうですが…なにか?」
ゼルダ姫は首を傾げながら答えた。
…それならば、答えはひとつだけだ。

「じゃあ、僕たちは参加しません。」

「「…!!!」」
「ど、どうして!?楽しそうじゃない!」
驚いて言葉を失っているトワとゼルダ姫から目をそらし、ゼルダと目を合わせた。
「僕は誰かを守る時だけに戦うって決めてるから。」
僕はで、でも…と言うゼルダにそれに、と続ける。
「ゼルダを戦わせるなんて僕にはできないよ。」
「うー…」
僕がそう言うとゼルダは不服そうな顔で引き下がった。
「やはり、マスターはマスターです。」
ファイがふわっと僕に笑いかける。
「どんなときでもゼルダ様を第一にお考えになることは、すばらしいことです。」
僕はファイに向き直った。
「ファイ…あの時、言えなかったことがあるんだ。」
「何でしょう?」
首を傾げるファイを僕は見据える。
「ファイがいなかったら、僕はゼルダを助けることはできなかった。本当にありがとう。」
僕がそう言って笑うとファイも暖かに微笑んだ。
「ファイはもうマスターソードに戻らねばなりません。しかし、マスターとこうして話せたこと、とても嬉しく思います。」

「ありがとう、マイマスター、リンク。」

ファイはその言葉を残してマスターソードに戻っていった。
僕はその余韻に少し浸ったあと、トワたちに向き直る。
「今日は本当にどうもありがとう。皆に会えたこともファイに会えたことも、すごく嬉しかった。」
「え、ええ!?本当に参加しないのか!?」
トワがすごく驚いた顔で僕に言う。
「トワ達は抜けたくないんでしょ?なら、なおさらさ。」
僕が笑ってそう言うと、トワは僕の手を強く握った。
「ああ、ありがとう!!!」
「リンク…あなたは私の心配をしてくれないのですね…」
トワの後ろから重い声が聞こえる。
見ると、ゼルダ姫が笑っていた。
…目が笑っていなかったが。
その様子をトワは見て、あたふたとしだした。
「え!いや、そう言う事じゃなくて…その…」
トワは口ごもると、急にぱっと笑顔を見せ、僕とゼルダに向き直る。
「そうだ!またくればいいじゃん!参加しなくても大歓迎だぜ!」
「え、いいの!?」
「もちろんだ!」
ゼルダは嬉しそうにトワと握手をする。
…話をそらすの無理矢理すぎはしないか。
案の定、ゼルダ姫の重いオーラがどんどん黒くなっていく。
 
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