赤のしおり

□赤いヒーロー
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ある日の学校帰りのこと。

「…なあ、アヤノ」
「なあに?」
アヤノは黒い髪を揺らしながら振り返った。
「真夏なのになんでマフラーつけてるんだ?」
俺の問いにアヤノは照れたように微笑んだ。
「うーん…目印、かな。」
「目印?なんの?」
「皆がすぐ見つけられるような……そう!」
アヤノは、ぱあっと笑顔を咲かせる。
「赤い色はヒーローの色だから。ヒーローがすぐ見つからないとダメでしょ?」
そう言ってアヤノは俺の手を取った。
「ヒーローって…くくっ」
「あっ、笑った!ひどいっ!」
声を押し殺して笑う俺をアヤノは頬を膨らませて睨んでいた。
すると、アヤノは突然何かを思いついたように目を輝かせた。
「な、なんだよ……」
「じゃあさ、シンタローは私のヒーローになってよ!」
「はぁ?」
突然の言葉に気の抜けた返事がでる。
「私にはヒーローがいないから…ねぇ、いいでしょ?」
意味が分からないし、良くないし。
「嫌d「よーし、決定っ!!」
……どうやら俺の権限はないらしい。
俺は楽しそうに話を進めるアヤノを見て呆れた。
「……もう、知らね…」
そう言って家に向かって歩き出す。
待ってよー!と後ろから声が聞こえたが振り向くことはしなかった。
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