すみれ色のしおり

□驚きはいつも
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「馬糞いつなげるんだ?」

「へ?」

縁側に座る鯰尾に後ろから話しかける。


「いつも言ってるだろ?嫌いなやつに投げる!って。」

俺はそう言っていつも鯰尾がやっているように投げる真似をしてみせる。
すると、鯰尾はやっとわかったというように笑った。

「あぁ、投げませんよ。」

「投げないのか?」

「投げて欲しいんですか?」

「い、いや、それは遠慮させてくれ。」

俺がそう言ってすすすと後ずさると鯰尾は冗談ですよ、と立ち上がる。

「だって、本丸に嫌いな人なんていないですもん。」

そうでしょ?と鯰尾はにへらと笑う。
長い髪が肩からさらりと落ちる。

「…そりゃ、いい驚きだな。逆にいつ投げるんだ?」

「そりゃあ、敵さんに決まってるじゃないですかー」

でも、持っていこうとするといち兄に止められるんです、とすねた子供のように言う。

「そうか!では、次一緒に出陣する時は馬糞を持ち出せるように協力しよう。」

「ほんとですか!?ありがとうございます!」

鯰尾はその顔をぱああっと笑顔にする。

驚きはいつも、誰かを幸せにする。
それが、いい驚きというものだ。
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