水色のしおり

□小さな君
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「……渚君?」
教室の窓際に立ち、オレンジになりかけた空を見つめる渚君がいた。
外を眺めているためその表情は見えない。
俺の声に気がついていないのか窓の向こうをまだ眺めている。
俺は少しのいたずら心をもって静かに渚君の背後から忍び寄った。
「なーぎさ君っ!」
「……わっ……!」
俺はその小さな背中に飛びつき、驚いた顔をおがもうと表情をのぞき込んだ。
「……あれ……?」
そこにあった顔は想像していたものとは全く違っていた。
目が赤くはれ、頬が濡れている。
確かに驚きの表情はあったが、それ以上に絶望の類の感情が渚君の顔に刻まれていた。
「何で泣いてるの?」
「……っ!」
渚君はすぐにうつむき、涙を拭う。
そして渚君は顔をあげた時にはいつもの優しい笑顔を浮かべていた。
「……なんでもないよ。一緒に帰る?」
えへへ、と笑う渚君を見て俺はむぎゅっと渚君の頬をつねった。
「い、いひゃいっ……」
「なんでもなくないよ。何で教えてくれないの?」
「そ、それは……」
渚君が下を向き唇を噛みしめる。
「……言いたくないならいいんだけどさ。」
俺は渚君の様子を見て言う。
なんだか本当に辛そうだ。
普段見せない顔だったからか俺まで心が痛くなる。
「…………え」
俺の言葉が意外だったのか、渚君は顔をあげて目を丸くした。
「何、その目?」
「い、いや、カルマ君もそういうとこあるんだなって……」
おたふたと喋る渚君を見て、俺は追い討ちをかける。
「え?じゃあ、渚君は今まで俺がプライバシーもへったくれもないやつだとおもってたの?」
「そ、そんなことないよっ!」
俺がニヤニヤと笑えば渚君は困ったように反論する。
「渚君は一人で抱え込むタイプの人だからさ。ちょっと心配なんだ。すぐにつぶれてしまいそうで。」
「カルマ君……」
「それじゃ、帰ろっか。」
らしくないことを言ったな、と思い渚君に背を向けた。
「カっ、カルマ君っ!」
突然腕を引かれ、驚いて振り向けば渚君が真剣な顔でこちらを見ていた。
「……やっぱり、聞いてくれる?」
「……いいよ。」
渚君は俺の了承を得て、ニコリと笑うと話始めた。
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