BOOK

□clown
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俺は、おうさま。

カラフルな彼らをまとめる絶対君主。
おうさま。誰も俺には逆らわない。
逆らうことなんて俺が許さないから。
俺の手の上には彼らの鎖がある。
俺はそれを引いて、100人の前へ立つ。
俺を怖がる素振り。とても楽しい。
怖がられるのは、俺の力の象徴だから、すごくうれしく感じる。

でもたったひとつ、
この俺に逆らってきたカラフルな彼ら。
だんだん仲間割れが酷くなって。
紫色に、俺には勝てると言われた。
思わず、喧嘩をかいそうになったけど。
俺はおうさまなので、
この感情を無くすことにした。
周りに人間どもより僕は大人であり、
おうさまなのだ。

こうして俺は、いつしか僕になっていた。

いろんなものが変わった。
新しく入った高校は僕に逆らう者はいない。
誰もが僕を尊重するのだ。
僕は再び、誰もが怯えるおうさまとなった。
誰もが逆らわない。
僕はカミサマのように扱われる。
中には妬みを言う奴もいるけど。
ことごとく、不埒な連中をつぶした。
権力さえあれば、何でもできる。
いつしか僕はそう思い始めていた。



時が経つに擦れ、僕はあることに気が付いた。
心のこの辺がどうもむず痒い。
なんだか時々涙が溢れる。
この感情を僕は知らなかった。
教えてくれることもなく、
ただただ毎日は過ぎていった。

授業中、窓を見た。
部員たちが僕に緊張の顔を出す。
なんだかつまらない。
そう感じた。



いつからだろうか、
カラフルな彼らの笑顔が消えてしまったのは。
僕が消した?
彼らが自ら無くしたのか?
答えはひとつ。
笑う機会がなくなったから。
絶対君主のような僕に笑いかけてくれる、
そんな人は勇者のように称えられる。
僕は本当にカミサマなのかとか、
本当に考えてしまう。

僕は人間なのに、
天皇のように崇められる。
赤司家は皆そうだった。
僕はそんな家系のムスコ。
特別なのは、元からだった。
普通に接してほしかった。
一人の人間として。

ひとりでに涙が出るのは、ただ、

僕自身が寂しかった。



感情を知らないのは、

僕がそんな感情しか、
今まで持たなかったから。

分からない感情を、
無くそうとしていた。

もっと知るべきだった。
おうさまにこだわっていた。





そんな、自分が恨めしくなった。






「赤司っち〜」

「赤司」

「赤司君」

「あかち〜ん」

「赤司!」



「どうしたんだ?みんな。」



「いつも俺たちの面倒見ててくれて、ありがとうッス!」

「お前はいつも一人で抱え込みすぎなのだよ。」

「僕たちを頼ってほしいところですよ、赤司君。」

「あかちん頑張ってるから、俺のお気に入りのまいう棒あげる〜」

「お前は、俺たちの必要なキャプテンさまなんだからな!」






「…。」






「あれれ?怒っちゃった?あかちん。」

「どうしたんですか?赤司君」

「怒んなよー」

「わわっ。怒らないでほしいッス!」

「おい、赤司、どうしたのだよ」





「…ありがとう、みんな。」





あの時の感情を、僕はずっと覚えていた。

俺が、僕に変わるまで…








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