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□ありったけの思いを君に
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※独占欲が強い黒子の話です

















僕が君を呼ぶたび、笑顔で君は振り向く。それがたまらなく、嬉しかった。
僕だけに許された笑顔。僕だけにしか見せない笑顔。
僕の中にある独占欲が渦を巻いて、だんだん大きくなっていくのが分かった。
『この笑顔は僕だけのものだ。』ずっと、中学校の時は思っていた。

時代は変わるもの、行く高校も違えば、同じ県ですらない。
自然と君と逢う回数が少なくなってきた。寂しい。
僕は一人でやっていけるか心配なだけだった。
君が眩しすぎて、頭がクラクラしてしまうんだ。
君という僕の光、もう見失ってしまわないように、この感情をどこかに沈めた。

いつか君は僕を離れるのだろうか。
僕はその時どうすればいいのか。
君を笑って見送りだせばいいのか。

そんなのありえない!

君は僕がいないとなにもできない!
笑うこともできない!
僕にだけ向けるその笑顔を誰かに渡さないで!
僕だけの君になってよ!

ねえ、黄瀬君。




「黒子っち、どうしたんスか?」


「なんでもありません。それより、ねえ黄瀬君。」


「なんスか?」


「僕だけに見せる笑顔が僕は大好きです。」


「…変な黒子っち。」


「分からなくていいですよ。」




今だけは……ね、黄瀬君。

いつか僕の手で君を―――――したいな。

その時は、どうか笑っていて?







「初めて会ったとき、なんだコイツって思っちゃったス。」


そんなことは知っている。僕の実力が自分に比べ物にならないくらい弱かったから。
あんな目で見られるのは慣れている。
パスしか取り柄のない、僕だから。


「そう思わせてすいません。」


少し、怒りを込めて言い放ってみた。
言った途端顔の形相がガラリと変わった。


「黒子っち、もしかしてたら怒ってる?」


悲しそうな顔をしながら僕に近づいていく黄瀬君。
この顔が、僕は好きだ。
この、悲しみや絶望に満ちた顔。
楽しくて、たまらない。


「怒ってないですよ。ごめんなさい、黄瀬君。」


「黒子っちぃ〜」


黄瀬君が僕のことをどう思っているかわからないけど。
僕はこのままの関係は絶対に嫌だった。
黄瀬君のいろんな顔が見てみたい。
いろんなことに挑戦してみたい。
キス、したい。
もしかしたら、行き過ぎた愛情をあげてしまうかもしれない。
でも、もうこの感情は抑えられない。

抑えることなど、もう、できなくて。
手遅れなのです。


「僕、黄瀬君が好きです。」


「俺もッス!」


この人はどっちの意味か分かっているのでしょうか。

まあ、こんなのも日常ってやつですよね。





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