読物*花

□今宵の月
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土方十四郎side




屯所を出たのは朝だった。
小鳥がさえずり
住民たちが起きる頃。

(総悟が早起きなんざ珍しいことも
あるんだな。)

俺は屯所を出る前にマヨと小刀と煙草と届いたハガキを持ってきた。

マヨと小刀はなにかあったときに
使おうと思ってな。
ハガキは一応だ。

(あえて財布は持ってこなかった。)

ハガキを見ればどういうワケか
威圧感が感じられる。



「……ん?」

よく見れば切手は
雑に斜めに貼ってあるし
字も多少荒っぽい。


大分苛立ってんだろうな…。

幕府のお偉いさんからの
ハガキだろう。

組を立てるときからあると
言っていた。

組が成り立ってんのは幕府の
お陰と言っても過言ではない。



俺は死ぬんだ、――そう思っても
まだ実感が湧かずにいた。

今までピンピンしてるのに
いきなり死んじまうんだ、
想像すら出来ねぇわ。

「最後…だしな…。」
俺は武州へと向かった。
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