中村春菊作品
□※ホワイトデー
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「宇佐見先生ー、本が出来たので届けに来ましたー。…あれ?先生は?」
ある日の午前、相川さんが来た。
「あぁ、相川さん。ウサギさんならまだ寝てますよ」
「あら、そうなの…」
「あっ、今お茶用意しますね」
「気持ちはありがたいけど、他の作家の所にも行かなくちゃいけないから、また今度ね。これ、新刊だから、先生によろしく言っておいて」
「はい。分かりました」
笑顔で相川さんを見送る。
相川さん、目の下に隈くっきり浮かんでたな。忙しそうだし、ちゃんと寝れてないのかな。
多分…というか、絶対ウサギさんのせいだろうな…。
本当にウサギさんいい加減に〆切守ったら良いのに。
相川さんに渡された袋を見る。
入っていた本を手に持つ。
「結構厚いなぁ」
パラパラと数ページめくってみる。
「…」
が、すぐにパタンと閉じた。
「やっぱ小説は読むの苦手だ。…あれ?違うのが入ってる…」
見ると、それは見覚えのあるピンク色の表紙。
これはもしかしなくとも…
「あんのバカウサギ」
ウサギさんは本名以外に秋川弥生というP.NでBL小説を書いている。
ううっ…読みたくないけど、自分の事だから気になる…。
…そして30分後
「もう、許せねぇ…」
内容はホワイトデー編というもので、俺だったら絶対に出来ない事だった。
「文句言ってやる…」