happiness

□happiness
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戦場よりミッドガルへ帰って来た神羅軍。
戦力では圧倒しているものの、はるか彷徨の僻地への進軍は、想定外の妨害や困難に遭い、思うような戦果を上げられず膠着状態が続く。

長くミッドガルの戦力を削る訳にもいかず、精鋭部隊である戦士(ソルジャー)、中でもクラス1stであるアンジール、ジェネシス、セフィロスの三人は、半ば強制的に神羅の中枢が置かれるミッドガルへ帰還した。

…いつもの事だが、命令に左右され最果てからの移動にジェネシスは不満を持つ。
口には出さないが、不機嫌を前面に出し足早に自室へと向かう背中に、アンジールは溜め息を吐く。

友人に心を砕いて居るアンジールに、セフィロスは穏やかに話し掛ける。



「…荒れてるな」

「まあ…な。戦術的にこの時期の帰還に、意味があるとは思えん。」

「社長命令だ、仕方ない」

「だからだ……。我儘に振り回されて、…ジェネシスでなくとも不愉快だ。」

「ああ…」


苦笑いを溢し、ジェネシスに向く。


「未だ“仕事”は終わってないぞジェネシス!」
「疲れたんだ、戦争よりも移動にね!早く帰って休みたいっ」

「…ソルジャーは全員ビルに集合だ。1stは社長に戦況報告の義務もあるだろ」
「拒否する!」
「そうしよう。」
「セフィロスっ」


堂々と命令無視するジェネシスに、てっきり一緒に説得してくれているのかと思えば、セフィロスは涼しい顔でジェネシスに着く。
アンジールの非難の声にも優雅な笑みを湛えている。


「ソルジャーは戦うことが仕事だろう。報告だけなら一般兵の伝達係で事足りる。拒否したところで支障はないさ」

「……お前達は本当に、仕事は報告だけではな…い……っ?」
「?」



言い淀むアンジールに二人は振り返る。

てっきりいつもの様に長い説教が始まるのかと思って見れば…、アンジールは二人を見ておらず、頭上を凝視していた。


「アンジール?」
「?」


セフィロスはアンジールの視線を辿り空を見上げた。


………はるか彼方の上空…。黒い点が見える。





「……あれは何だ??」
「?……?」



ジェネシスもその存在に気付く。
初めは芥子粒の様な黒い点だったが、次第にその形が見えてくる。


「?…鳥か…?」
「?………落ちてきてないか…?」
「あれは……、人だ…ッ」



言うが速いか、セフィロスは地を蹴った。

常人ならざる速さで跳び、神羅ビルの上へ駆け上る。

「人だと?」 未だ確認しきれていないアンジールが、目を凝らしている。

ジェネシスは鳥ではない何かの形を確認したが、人間とは断言出来なかった。

すでにビルの屋上近くまで駆け上がった友人を見守る。


セフィロスは自分で自身の行動に疑問を持った。
気付いた時には地を蹴りビルを駆け上り、何だか判らない空から降ってくる“物体”を受け止める姿勢になって居た。



“……この自分が…?” 頭の片隅でそう思いながらも両腕は“其れ”に伸ばされていた。


「…………」





黒い服を纏い、身の丈程ある幅広の剣を背負った人の身体が近付く…。

両腕で抱えた時、衝撃を覚悟したがそれは無く、ふんわりと腕に収まった。

しっかりと抱き止めると、確かな重みがずっしりと掛かる。


「っ…………?」



空から落ちて来たのは人だった。



“男”は瞼を閉じ眠っていた…。透き通るような白い肌、柔らかな金色の髪、……瞳の色は青だろうか。

男を見つめぼんやり思った。



「ッセフィロス!!!」




鋭いアンジールの声に、セフィロスは男から意識を逸らし、間近に迫る地面に向き詠唱する。



「レビテト」





瞬間ふわりと身体が軽やかに浮いた。
“空飛”の呪文など今時誰も使わないが、珍しいからとマテリアを持って居たのが役に立った。

男を受け止めたまま、上空からそのまま落ちてくるセフィロスに冷や汗をかいたアンジールだったが、魔法で宙に浮き、ゆっくりと舞い降りる様を見て安堵した。


「何故もっと早くマテリアを使わないっ?心配するだろ!」
「うっかりしてた」
「うっかりで済むか!」
「っアンジール、静かに」


友の叱責を手で遮り、ジェネシスはセフィロスの腕の中の者を見つめる。


「……なんて無垢な寝顔だ……」



うっとりと囁かれた言葉に、アンジールは眉を潜め

「本当に人間だったのか」


落ちて来た空を見上げた後、セフィロスを見る。


「…信じられん…。空に魔法陣も見られなかった。召喚獣の類でも無さそうだな」

「アンジール…、この寝顔をちゃんと見たのか?何処が召喚獣に見えるんだ?」

「…だが、…何故空から落ちて来た?」




ジェネシスの言い分は判るが、アンジールの言う様に召喚されでもしない限り“あんな場所”から落ちてくるなど、理に適わない。

腕の中、無防備に眠りにつく男を見つめ、セフィロスも眉を潜ませた。


「ああ!御三方っ、此方に居られましたか」




後方から兵士が3人に声を掛けた。
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