贈り物

□私の帰る場所
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「ユリウスの馬鹿……」

ボソッと、小さく漏れた言葉。馬鹿なのは私の方だ。
失うまで自分の気持ちに気づかない、なんて。やっと会えたのに、何もできず、また失うなんて。
「馬鹿、馬鹿」
つぅーっと堪えてたものが頬を伝う。

『ガチャ』
突然扉の音がして、ばっと後ろを振り向く。
「あ、アリス?!な、なぜ泣いているんだ?!何かあったのか?」
「っっ」
聞き慣れた、懐かしい声。慌てたような、困ったような顔で立っていたのは、紛れもなく私の知るユリウスだ。
「ユリウス……!!」
良かった、弾かれたわけじゃなかったんだ。ほっとして、堪えてた涙が止まらなくなる。

「な、泣くな!何か嫌な事があったのか…?誰かに何かされたのか?!」
「泣いていたのは、ユリウスのせいよ」
「私の…?私がお前を泣かせたの、か…?っておい!アリス!」

言葉を遮るように、駆け寄ってユリウスに抱きついていた。
しがみつく、という表現が正しいんじゃないかという位、腕に強く力をこめる。側にいてほしくて、ここにいるのだという実感がほしくて。
変に思っているだろうに、ユリウスは何も言わずに抱きしめ返してくれた。
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