少女ノ物語

□ずっと傍にいようね
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「今日もいい天気です」
そう呟き、外の空気を吸いながら私は大きく伸びをした。

あの戦いから数カ月が経ち、わたしは駆くんと一緒に自分が元住んでいた家で静養中だ。
駆くんの体調は、まだ優れてはいないようだけどほんの少しずつ快方に向かい始めているが、熱や悪夢に魘されるのはまだある。
だけど、またこうして駆くんと一緒にいられるのはすごくうれしいことだ。
もう離れ離れは嫌だといつも思ってしまう。

「こはる?」
「駆くん!もう起きていて大丈夫なんですか」
「うん。こはるは心配性だなぁ」
「心配性って、大好きな人ですから当たり前です」
すると、駆くんは驚き「えっ」といった。
(何を驚いているんでしょうか・・・)
驚いた原因を探す為、わたしは周りをきょろきょろしたが何処までも広がる草原ばかりで怪しいものは何もなかった。
そうすると今度は突然、駆くんは笑い始めた。
「ふふっ、あははははははっ!!!!」
「何がおかしいんですか?」
「おかしいよ、だって俺こはるが言ったことに驚いたのに、きょろきょろと周りを見始めるんだから」
「言ったことってなんですか?」
(そんなに驚くようなこと、わたしは言った覚えはないんですが)
「大好きな人って言ったじゃないか」
「・・・っ!!!」
駆くんに言われて、思い出したわたしは顔がだんだん火照って来たのが分かる。
「顔真っ赤だよ?こはる」
「だ、誰のせいですかっ!」
「そんな顔真っ赤にして言われても説得力がないし、なにより可愛く見えるんだけど」
駆くんはそう言ってわたしを抱きしめた。
「心配しなくても俺は元気だよ」
「昨日まで熱があったじゃないですか・・・」
「何の事かな?」
へらっと笑い、わたしの背中をぽんぽんと優しく叩いた。
「とぼけないでください」
「ははっごめん、ごめん。でも無自覚で言ったんだね、
大好きな人って」
「無自覚じゃなくて、いつも駆くんのことをそう思ってますよ」
「へぇ、思っているだけでそれをあんまり君の口から聞いたこと
ないよ?」
「うぅっ」
わたしは、なんだか恥ずかしくなってきて駆くんの胸に顔隠しながらしがみついた。
「虐めすぎたね、ごめんこはる」
「許さないです・・・」
駆くんはまたわたしの背中をぽんぽん叩いた。
「それは困るなぁ、傷つくよ?」
「あっ、す、すみません」
「なんてね」
そうしてまた、にこっと悪戯っぽく笑った。

「・・・駆くん」
「ん?なぁに、こはる」
「好きです、大好きです」
と、駆くんに告白すると駆くんは固まった。
(えっと、・・・・わたしまた何かしてしまいました?)
「・・・こはる」
「はい?」
「かわいすぎ!」
そう言って駆くんは強く抱きしめてきた。
「えっ、ちょっか、駆くん!!苦しいです!」
「不意打ちだよ、いきなり好きなんて言うってさ」
「え、あのいけませんでしたか?」
「全然、全くだよ」
彼はわたしの頬を撫でた。
「嬉しかっただけだよ、君がそんなこと言うなんてあんまりないからね」
「駆くんがわたしの口から聞いたことがないって言ったじゃないですか」
「確かにそうは言ったけど、こうも早く実行に移してくれるなんて思わないじゃないか」
そう言って駆くんはわたしに唇を合わせた。
「かけっ、んっ」
キスはとても長く唇が離れた時にはわたしは肩で息をした。
「幸せだよ、こはる」
「はぁ・・・・な、何がですか?」
「こうして君と一緒に入れることがだよ。短い間だったにしても、一度は離れた事があって・・・・、俺たちは敵同士だった・・・・」
「・・・・っ」
そうだ、忘れもしないあの戦い。駆くんの本心で戦ったのではなく洗脳をされ、わたしたちの敵として立ちはだかった。
「でも、今はこうしてまた一緒です。離れることはないです。
もう離れ離れになるのは嫌です」
もう最後の方は鼻声になり涙が流れた。
「こはる・・・、泣かないでよ。」
駆くんは、優しく涙を拭ってくれた。
「こはるのいうとおり、もう離れ離れにはならない。
離れ離れは俺だっていやさ」
「駆くん・・・・」
「だから、ずっと傍にいようね。ちゃんと君の隣にいるから、
黙っていなくなったりしないから」
「はい」
そうして駆くんは瞼にキスを落とした。

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