少女ノ物語

□心配
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私が外で洗濯物を干している時、拓海と薫はリビングで遊んでいたのに
洗濯物が干し終わったので外から戻るといなくなっていた
玄関をみると靴は二人ともあった
心当たりがあるところは探した
残る和室だけだ
―ガラ
「お〜いっ
拓海、かおっ・・・」
和室に入るなり二人の名前を呼ぼうとしたが
・・・やめた
なぜなら、二人は日光に当てられて気持ちよさそうに寝ていたからだ
拓海は普通に寝転び、薫は拓海の片腕を腕枕にして
二人とも向き合うように寝ていた
風邪ひくぞ?
いくら日光が暖かくてもまだ3月の半ばだ
仕方ない
毛布を取ろうと押入れを開けた瞬間―
「ん〜っ・・・」
起こしたか?
そう思い後ろを振り向くと
拓海が仰向きになっていた
なんだ寝がえりか
「たっく、驚かすなよ」
毛布を引っ張りだし、二人にかけてやった
「・・・っ」
私は座ったままなぜか動きが取れなくなった
誰かに掴まれた様な感覚はない
ただそれを見てしまったからだ
「こいつ、無理してんのか?」
私は拓海の寝顔みるなりそう呟いた
なぜなら拓海の目にうっすら隈が出来ていたからだ
結婚した後も仕事はしていたが薫が生まれるとそうはいかず
薫に寂しい思いをさせたくなく
仕事を辞めて、家事や育児に専念することにした
仕事で忙しい拓海も手伝ってくれた
今では薫も6歳になりそんなに手がかからなくなってきた

今思えば家事や育児に手を回しすぎて
あまり亭主の心配をする余裕もなかったな
私の中でそんな後悔が渦巻いてきた
「無理して身体壊されたらこっちは心配でたまらないから
無理しない程度で仕事がんばってくれよな」
そう呟き、拓海の髪をなでた


「んっ」
ぼやけた目で一番に見たのは天井だった
そしてなぜか片腕がしびれ出した
覚醒しきってない頭を横へ向けると
俺の腕を枕代わりにして寝ている薫がいた
あっ、そういえば薫と一緒に寝ていたんだっけ?
薫を起こさないように腕をとり、起きた
起きあがると毛布がかかっていたのに気づいた
一体、誰が?
そう思い少しばかし辺りをキョロキョロしていると
見なれた黒髪を見つけた
「美咲?」
美咲は横向きで俺が横向きになればちょうど向き合うような形で
すやすやと寝ていた
そうか毛布は美咲がかけてくれたんだ
(無理して身体壊されたらこっちは心配でたまらないから
無理しない程度で仕事がんばってくれよな)
そう言えば寝ている間にこういう声がかすかに聞こえた
おそらく声の主は美咲だろう
自分では無理はしていないと思うけど
美咲には俺が無理しているように見えたのか?
「・・・ふ
俺は、高校生のときから
美咲には心配かけすぎているのかな」
「・・・うん」
!?
返事が聞こえ起きたのかと思い
慌てて美咲の方を見ると起きてはいなかった
・・・寝言か
起こさないように薫を美咲の横に寝かせ
かけられていた毛布を二人にかけてあげた

END

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