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短いお話
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◆no title
『構成物質』
私を構成するものは、肉体・魂・精神、そして多くの『本当』と、ほんの少しの『嘘』。
いや、もしかしたら嘘の方が多いかもしれないな。
なんせ私は、人をただ騙すだけでなく、己の姿を、人格を、ありとあらゆるものを騙しているのだから。
実は、『本当』なんてものは何もなくて。
私はただ『嘘』だけで構成されているのだ。
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2013/06/26(Wed) 15:16
◆no title
『シャープペンシル』
シャーペンを、文字を書くための物だと言ったのは、誰だろう。
僕はシャーペンでぐりぐりと書きながら思う。
別にそれは、文字のためだけに存在している訳ではないのに。
使いようによっては、人に傷を付けることも、殺すことだって出来る。
これの先端は鋭く尖っているから、簡単に肉に刺さってしまうし、目を抉り出すことだって出来るだろう。
―――あぁ、うるさいなぁ。
紙がうるさくしてどうするんだよ。
ほんっと、耳障り。
苛々して、僕はシャーペンを紙に突き刺した。
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2013/06/26(Wed) 15:16
◆no title
『あかいろ』
薄暗い森に佇む。
空にはまぁるい月が光っていて、眩しいなとぼんやり思う。
足元には紅黒い闇が広範囲に広がっている。
汚いなぁ。
洗っても落ちないんじゃない? これ。
頭ははっきりしているのに、体は動いてくれなくて俺は佇んだまま。
―――誰か、助けてくれないかなぁ。
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2013/06/26(Wed) 15:16
◆no title
『消しゴム』
淡々と書き連ねられた文字を消す。
ノートの端から端まで、自分の存在を消していく。
今までを真っ白に戻す。
次第に消しゴムが半分になって、4分の1になって、そして消えた。
その頃には、全部のページが真っ白になっていて。
同時に僕も真っ白に消えていって。
どうやら、僕といつ存在を消すことに成長したようだ。
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2013/06/26(Wed) 15:15
◆no title
『雨』
目の前を色とりどりの花が通り過ぎて行く。
赤や青、黄色、白、黒、紫――。
そんな綺麗な花を眺めている僕は、まだ蕾のままで。
早く咲きたいな、まだかな、まだかな。
そこから見える景色を見てみたい。
きっと素敵なんだろうなぁ。
「お待たせ。ごめんな、遅くなって」
そう言われて、僕はやっと咲くことが出来た。
薄曇りの中、花を咲かせて見る景色は、キラキラと輝いて見えた。
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2013/06/26(Wed) 15:15
◆no title
『注射』
甘く広がる痛み。
慣れないそれに脳は訴えかけてくるけど、僕にとってそれは心地良いものでしかない。
目を閉じて、その心地良さにいつまでも浸っていたい。
けれどもそれは、10秒もしない内に終わってしまい、後には、小さな小さな穴しか残らない。
もっと、痛くしていいのに。
その小さな穴を広げて、痛みと共に溢れ出す血を、赤い紅い綺麗な輝きをもっと見たいのに。
物足りない。
「なら自分でやれば良いでしょ」
って、とても素敵な傷を持っているあの人は言うけれど。
だって自分じゃ無意識に手加減してしまう。
それじゃぁ、
「面白くないじゃないですか」
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2013/06/26(Wed) 15:15
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