カゲプロ

□深夜電話 (セトシン)
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目が覚めたのは、夜中の2時くらいだった。

どうしてこんな時間に…と自分でも思うが、目がさえてしまって再び眠りにつくことができない。

どうしたもんか…

パソコンでも開いて、くだらないサイトでも見ていようか。
でも、今はなんとなくそんな気分じゃなかった。
外に出て少し散歩してみようか。
……いやいや、これはない。
コミュ障の俺が、散歩なんてとんでもない。
誰かにあったらどうしてくれるんだ。

ベットの上で一人悶々としていると、つけたまま寝ていたのだろう、パソコンから声がした。

「どーしたんですかご主人?もしかして寝る前に見たエロ動画のことが頭から離れないんですかー?」

生意気な。
さすがの俺だって、エロ動画に興奮して寝られない、なんてことあるわけがない。
童貞じゃあるまいs…おっと。

はぁー…なんて、一日数えたら何百回にものぼるであろうため息をつき、よろよろとベットから立ち上がる。
今日モモはアジトに止まっているため、今家には誰もいない。

「………だる」

とりあえずリビングに向かう。

後ろからバカにしたような笑い声が聞こえてきたのは無視だ無視。




で、リビングに来たからといって、何かすることがあるのかといえばそうじゃない。
また暇になってしまい、冷蔵庫をあさる手を止めた。

………寝てないときとか、どうやって寝てたっけ?

考えれば考えるほど、頭は冴えて眠れなくなっていく。


悪循環だな。

ふ、と視線を上げれば、電話の横に、セトと一緒に撮った写真が目に入った。

セト、瀬戸幸助とは、いろいろあったが、今は晴れて…

こ、恋人、同士、だ。

いつまでたっても恋人っていう響きになれないのは童貞だからとかそういうんじゃないんだからな!

勝手に一人で赤くなっていると、不意に手にしていたケータイが鳴った。
「瀬戸幸助」。
画面に表示された名前を見て、思わず1コールなり終わらないくらいのところで出てしまった。
どうしよう、不自然に思われなかっただろうか。
急にかかってきた電話で、ちょっと気分が舞い上がってることはばれなかっただろうか。
さっきからずっとセトのことを考えていただなんて、恥ずかしすぎるじゃないか。

「……もしもし」

思わず低い声が出る。
我ながらわかりやすい照れ隠しだと思った。

「、シンタローさんっすか?すいません、こんな夜中に…」

端末から聞こえてきたのは、つい先ほどまで自分の脳内をいっぱいにしていた、いとしい恋人の声。

「……別にいいけど。なんかようかよ」

ああもう!
何言ってんだおれは!
違う、こんなことを言いたいんじゃない、

「用、はないんすけどね…すいません、急に声が聞きたくなって」

迷惑でしたよね、なんていうセトに、俺は何とも言えない気持ちがこみ上げてきた。

「っべ、つに!…た、たまにはいいんじゃないか、こういうのも」

たまにはって何だたまにはって。

あからさまに声が震えて情けなくなる。

電話越しに、セトが小さく笑うのが聞こえた。

笑われた。
きっとわかったんだろうな、声が震えてたの……恥ずかしい。

俺はごまかすように、咳払いを一つしてから、服の裾をぎゅっと握った。
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