ヒトリノオトコノコ 〜第2章〜

□ユウジョウ
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-ラッパッパ部室-


「これでもジッとしてろって言うのか...!?」


先ほどのことをおたべに伝えるため部室に向かうと、中から学ランがなにかに怒りを覚えているような声が聞こえた。


「ちょっと今いいですか...?」


「お前がただのビビリじゃねえってことは... 悠乃、どうしたんだ?」


部屋の中はおたべと学ランの2人だけで、学ランの手にはグシャグシャに丸められた紙が握られていた。


「いや、ちょっと気になることがあって...。」


「なんや? 話してみ。」


「さっき、学校に来る途中で...。」













悠乃は、先ほど学校の前であったことを2人に話した。


「それでなにか嫌な予感がしたから2人に伝えに来たんだ...。」


「分かった。 ウチらもヤバクネの動きは警戒しとく。 悠乃くんはもう行ってええで。」


「...そっか。 じゃあ、後は任せますよ...。」


ダンスだけではなく、おたべもなにかを隠しているようだったが、ここはおとなしく食い下がる。


「情報提供、ありがとな。」


「僕は体育館にいるから...。 何かあったら言って...。 それじゃ...。」









-体育館-


特に行くあてもない悠乃は、いつも通りに学校の体育館へ来ていた。


「今日は誰もいない... ん... ゲキカラ...?」


いつもなら誰もいない体育館だが、そこにはステージに掲げられた校旗を眺めるゲキカラの姿があった。


「どうしたの...?」


「ああ、悠乃か。 ちょっと前のラッパッパのことを思い出してた...。」


「シブヤのことも...?」


「うん...。」


ゲキカラは下唇を噛み、どこか悔しそうな表情をしている。


「ゲキカラはさ... シブヤのこと、許せる...?」


「裏切られたのはムカつくけど、それでもシブヤが自分で決めたやったことだから私は許せるかな...。」


「よかった...。 ちょうど僕も同じこと考えてた...。」


「え?」


「この戦争が終わって、もしシブヤがまた僕たちの輪の中に戻って来たいって言うなら... 僕はシブヤを優しく迎えてあげたい...。」




「...相変わらずお前は優しいやつだな。」


「ん...?」


後ろから声がしたので振り向くと、そこにはセンターの姿があった。


「珠理奈...。」


「いや、お前の場合は優しいじゃなくて生ぬるいって言ったほうが正しいかもな。」


「喧嘩を買う気はないよ...。」


「今日はお前に売りに来た訳じゃない。 なあ、ゲキカラ。」


「.....。」


「そろそろ決着、つけようぜ。」


「気分じゃないんだ。」


ゲキカラはセンターの顔も見ずに立ち去ろうとする。


「タイマンを気分でやられちゃ、納得いかねえ。」


しかし、語気を強めたセンターの言葉がゲキカラを立ち止まらせた。


「お前はなぜ闘う?」


「なぜ闘わない?」


背中を向け合った状態で話が進んでいく。


「優子さんが... 教えてくれた。」


「?」


優子、という単語に反応したセンターは、ゲキカラを見た。


「喧嘩には理由がなきゃ行けない。 理由のない喧嘩は、勝っても負けても虚しい。」


優子からの言葉を言い切ったゲキカラは、再び出口へと足を進める。


「ゲキカラ!」


「...もう少しだ。」


意味深な言葉を残すと、彼女は体育館を立ち去った。


「今回は君の負けだね...。」


「悔しいが、その通りだ。」


「じゃあ、僕ももう行くよ...。 君はもう少しゆっくり自分と向き合うべきだ...。」


悠乃もゲキカラの後を追ってその場を後にした。






「勝っても負けても虚しい...か...。」





ゲキカラと同じように校旗を見つめながら、センターはそう呟いた。
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