ヒトリノオトコノコ 〜第2章〜

□ジュンビ
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-自宅-


「んん...。」


午前11時過ぎ。


土曜日の朝にゆっくりと目を覚ますと、窓から春の陽射しが射し込んでいた。


暖かい部屋の中で体をグーッと伸ばして立ち上がり、リビングに出る。


「おはよ。」


するとそこには、ソファに座って悠乃の部屋から持ってきたであろう漫画を読んでいる神楽坂瑠花の姿があった。


「おはよ...。 全然気付かなかったけど、いつ起きたの...?」


「ん〜、30分くらい前かな。 悠乃、気持ちよさそうに寝てるから起こしちゃ悪いと思ってさ。」


「珍しく優しいんだね...(笑)」


「いつも優しいの間違いでしょ(笑)」


小言を言いながら、悠乃は瑠花の隣に座り、彼女の肩に頭を置いて読んでいる漫画を覗いた。


「瑠花ってこういう系の漫画好きだったんだ...。 意外...。」


彼女が読んでいる漫画は裏社会ものの青年漫画だった。


「別に、なんとなく手に取ったのがこれだったってだけ。 あんたこそ、こういうの買うんだね。 さっきちょっとエッチなシーンあったわよ?」


「別に俺が買ったわけじゃないし...。 親父の漫画でしょ...。」


「ふ〜ん。 あんたのお父さんって数えるほどしか会ったことないなぁ。」


悠乃の両親は現在、アメリカで暮らしていて彼は一人暮らしである。


彼自身も小学生とその入学前にアメリカに数年ほど暮らしていた経験がある。


両親は彼が高校生になるタイミングで仕事のために再びアメリカに戻ったのだ。


「確かにそうかもね...。 平日は家にいなかったし...。」


彼の父は堅実や真面目といった言葉が似合う人間であった。


そんな父親とは正反対な人間へと育っている息子を見て、今なにを思うのだろうか...。


「あんたってさ、寂しくないの?」


「なんで...?」


「だって、家に帰ってきても誰もいないんでしょ?」


「まあそうだけど...。」


「だからいつも女の子のところにいるんでしょ。」


「.....。」


その言葉は核心をついていた。


恐らく悠乃本人にそういった意識はないのだろうが、言われてみればそうと言わざるを得なかった。


「黙ってるってことはそうなんだ。」


「ダメなの...?」


「別にダメじゃないよ。」


「じゃあなんで...。」


「寂しかったらいつでも私のことを頼ってきなよ。」


瑠花は自らの肩の上にある悠乃の頭を撫でながらそう答えた。


「え...。」


「別に私だけじゃないよ。 サドちゃんも、シブヤちゃんも、スカーフェイスのみんなもあんたの味方なんだからさ。」


「味方...。」


「あんたが困ってたらみんな助けてくれると思うよ。 少なくとも私は何があってもあんたを助ける。」


「瑠花...。」


「だから、そんなに怖がらないでも大丈夫なんだよ?」


いつもであれば自分のことしか考えてない自己中心的な彼女だが、今日はいつもより優しかった。


「瑠花、なんかいつもと違うね...?」


「2人のときはいつもこんなもんでしょ。 みんなの前だと恥ずかしいから絶対に優しい態度なんか取らないけどさ。」


「そういえばそうか...。 君はツンデレだもんね...(笑)」


「可愛いでしょ?(笑)」


「うん...(笑) 相変わらずだね...(笑)」


「ふふ(笑) よ〜し、久々にあんたの笑顔いっぱい見たしもう帰ろっかな!」


「うん... じゃあ、またなにかあったら連絡するね...。」


「待ってるよ。 大好きだからね、悠乃。 じゃあね!」


「ありがと...。 じゃあね...。」


瑠花は手を振って家を出ていった。



「(味方、か...。)」
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