ヒトリノオトコノコ 〜第2章〜
□ショウカイ
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とある日の休日。
部屋で1人のんびり昼寝をしていると、北大路からの電話が鳴り響いた。
無視をしても仕方がないので、目をこすりながら電話に出る。
「なに...?」
『もしもし? 北大路だけど、今からいつもの喫茶店に来れないか?』
「いいけど...。」
『寝てたのか?』
「そうだよ...。」
気持ちよく寝ていたところを起こされた悠乃は珍しく不機嫌で、北大路に対してずいぶんとぶっきらぼうな態度をとっている。
『すまんすまん。 お前に紹介したいやつがいるんだ。』
「紹介...? 女の子だったら間に合ってるよ...。」
『違えよ。 神宮の件で力になってくれそうなやつだ。 まあ、昼メシがてらでいいから来てくれよ。』
「奢り...?」
『...分かったよ。 だからとっとと来いよ。 じゃあ、また後でな。』
電話が切れると同時に悠乃は立ち上がり、眠そうな表情のまま服を着替えて家を出た。
-喫茶店-
カランカラン...。
「おう、悠乃。 いらっしゃい。」
家を出てから数分が経った。 喫茶店に入ると、いつものようにマスターが悠乃に声をかけてくれた。
「こんにちは...。 北大路、いるよね...?」
「ああ、いつものところに。」
「そっか...。 どうも〜...。」
まだ少し眠そうな表情で、いつもの席に向かう。
「お、来たな。」
「紹介したい人って、この人...?」
パーテーションの先にあるいつもの席には、北大路ともう1人、なかなか骨のありそうな男が座っていた。
「ああ。 俺の中学の同級生で、かつて室蘭と引き分けたこともある九鬼武蔵だ。」
北大路が男を紹介すると、彼は立ち上がり、悠乃の前に立った。
「お前が桐ヶ谷悠乃か。 噂は色々と聞いてる。 宜しくな。」
「うん...。 よろしく...。」
軽く握手をすると、悠乃は2人の隣の席に座った。
「で、室蘭のことだっけか?」
「そうだ。 お前だったら室蘭についても色々知ってるだろうと思ってな。」
アイスコーヒーを飲みながら会話を進める。
「まあ、昔はアイツとよく馬鹿やってたからな。 って言っても、中学卒業してから1回タイマンして引き分けた以来、アイツとは一度も会ってないぜ?」
「それでも、もし何かあったとき、お前ならアイツに取り入れるんじゃないかと思ってな。」
「まあ、今でも負ける気はしないよ。 ...勝てる気もしないけどな。」
「室蘭ってそんなに強いの...?」
黙っていた悠乃が口を開いた。
「ああ。 ハマの王子って名前は伊達じゃねえぞ。 喧嘩の強さはもちろん、アイツ自身の圧倒的なカリスマ性でどんどんとシマを手に入れてるんだ。」
「なるほどね...。 僕的にはなんだかお高くまとまってるようで気に入らないけどね...。」
「まあでも、喧嘩になれば真っ向からぶつかってくる男だ。 神宮みたいに卑怯な手は好まないタイプの人間だからな。」
「そうなんだ...。 なんか意外だな...。」
「仲間にしてる分にはいいやつだよ。 ただ、敵にするならかなり厄介だな...。」