ヒトリノオトコノコ 〜第2章〜
□キコク
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-私立馬路須賀女学園-
悠乃は、数ヶ月ぶりにマジ女へと戻って来ていた。
しかし、その姿からは、以前のような覇気や堂々とした雰囲気は感じ取れず、寧ろ何かに怯えて縮こまってしまっているように見えた。
「(とりあえず、部室に行ってみよう...。)」
-部室-
ここは天下のマジ女ラッパッパの部室。
その中心では七輪を囲み、ホルモンを焼く深緑のジャージ集団がいた。
「それにしても、あのおたべってやつも掴めねえよな。」
「アキチャ、それウチも同感。 ウナギはどう思う?」
「バンジー、どう思うも何も同じ意見だよ。 ヲタは?」
「まあそう焦るな。 って言いたいところだけど、全四天王もゲキカラしかいねえし、スカーフェイスの橋本さんと白石さんも脱退で、雷斗と風魔も意識不明だからなぁ。」
チームホルモンのリーダーであるヲタが全員の話を纏める。
「それに、悠乃もいねえしよ。 以前のラッパッパの内部にいた数少ない1人だからなぁ。」
「「「「いや! ムクチ本当に喋るようになったな!」」」」
以前まで何も喋らなかったムクチも、4人の会話に加わっていた。
「まあ、確かに悠乃がいねえのはデカイよなぁ...。」
「そない強いんか? その悠乃って人は。」
「お、おたべ!」
5人がホルモンを囲んでいると、おたべが部室に戻ってきたようだ。
「ウチの悪口は聞いてなかったことにするわ。 で、その悠乃って?」
「前のラッパッパで、優子さん以外全員を倒したツワモノだよ。」
「「「「「学ラン!」」」」」
ラッパッパ新四天王、学ラン、改ため洋ラン。
だが、みんなは今まで通り学ランと呼んでいるようだ。
「ほう。 あんたがそこまで言うんやったら相当なもんなんやろうなぁ...。」
「俺以外の唯一の男子生徒だったやつだよ。 まあ、見た目は女みてえだったけどな。」
「女みたいな男か...。」
「悠乃には姉貴ですらも敵わなかったですからね...。」
「ああ。 思い出すだけでイライラしてくる...。」
「おう、歌舞伎。 お帰り。」
「今は能・狂言シスターズだっつーの。」
彼女たちも、歌舞伎シスターズから名前を変えたようだ。
「フフフ...。 悠乃に会いたいなぁ...。」
「ゲキカラ、喧嘩は控えろって。」
前四天王でもあったゲキカラだが、出席日数不足ということもあって留年したようだ。
「分かってるよ〜。 ウフフ...。」
「それにしても、その悠乃だけでそんなに尺取れるってことは本当に強いんだろうね。 私そんなに喧嘩したことないし、悠乃とあんまり喋ったことないから分からないんだけど「あの...。」ちょっと〜! 尺取らないでよ!」
全員が部室の入り口を見ると、そこにはまぎれもない悠乃本人が立っていた。