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□たぶん君の望むものは僕はもってないよ
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「吉良が好き」



鳩が豆鉄砲を食らった顔とはこの事か、まるで呼吸すら止まってるんじゃないかという程ぴくりとも動かない。


「聞いてる?」

「あっ、えっ!ああ、あ!」


不意に手元に重ねてある書類に触れてしまい、勢いよく床に雪崩落ちる。
見ているこちらまでつられてしまう位、明らかに動揺を隠せない吉良の姿に赤面する。


「そんなに動揺しなくてもいいのに」

「ごめっ、ちがっ」

「私、吉良が好きだよ」

「え、え、でも僕は檜佐木さんみたいに器大きくないし」

「は?」

「阿散井くんみたいに楽しく笑えないし…」


徐々にか細くなっていく言葉と比例するように、書類を拾い集める背中も小さく縮こまる。


「私が好きなのは吉良だよ、檜佐木さんでも阿散井でもない」

「でも、」

「目見て喋りなさいよ」

「わっ!」


尚も訳のわからない話を続ける吉良に、痺れを切らし無理矢理こちらに顔を向かせ、視線を合わせる。


「吉良だけ見て、吉良と話してるのにどうして他の人が出てくるの?」

「ごめん。僕も君が、」


でもどうして僕なのか、君に好かれる理由が分からなくて。
そう続けて俯いたまま黙り込む。


「焦れったい」

「ご、ごめん」

「謝るな!」

「痛っ!」

「今度謝ったり他の人と比べたら殴るから」

「もう殴ってるんじゃ…」

「今のはビンタ」






END

肉食女子と草食男子。

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