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□ハロウィーン
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満月が暗闇を照らす真夜中、忍び足で廊下を渡る一つの影。
愛しのあの人が居る筈の部屋の前に立ち、ううんと声を整えノックする。


「日番谷隊長?いらっしゃいますか?」


呼び掛けるものの、返事はない。人の気配どころか物音一つしない。
そんなはずはない。数分前に、日番谷が自室に入る瞬間をしかとこの目で捕えたのだから。


「日番谷隊長〜?ノックはしましたから勝手に入りますよ〜?」

「いやダメだろ」


襖に手を掛けた瞬間、少しだけ開きその隙間から覗き込むとやや呆れた声色の日番谷と目が合った。
指先に力を込め襖を開けようとするがびくともしない。


「返事くらいして下さいよ」

「…何か用か?」

「今日はハロウィーンですよ!」


にこりと微笑めば、日番谷は引きつらせながらも苦笑いをお返しした。


「渡したくないとか渡すのが面倒だったら家の電気消して真っ暗にして居留守を使うらしい」


よくご存じですね!と目の前にいる天才児に目を輝かせるが襖を押さえる力は一向に緩むことはない。


「というわけだ」


滅多に見せない笑顔を向けられ、不意討ちをくらい気が抜けた所でピシャンと襖を閉じられてしまった。


「…ああ!そんな冷たいところも素敵!」





今宵も私は貴方の虜です。

end

 

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