main

□拍手SS
2ページ/2ページ




「俺の夢は、お前と幸せな家庭を築いて毎日を笑って過ごす」

「…」

「毎晩痛いくらいの愛を貰って、お返しに深いキスをして、幸福に沈みながら眠りにつく」

「…」

「愛の証には二人の天使と、その二人に囲まれて至福と癒しの空間に」

「…」

「こんな未来予想図どうよ?」

「修兵、人に夢とかいて儚いって読むって知ってた?」

「ぐすん」




どんまい。







「やぁ」

「げっ!」

「随分な挨拶やね」

「わたし市丸隊長嫌いなので」

「そんなストレートに言われたん初めてやわ」


目を更に細め口元を軽く上げて、笑う。


「その嘘くさい笑い方やめてもらえますか?」

「あぁ、これ?」

「それです」

「ボクな、笑い方より先に、人の殺し方覚えたんよ」


もう一度、口元だけ上げる。
ああ、この人は笑わないんじゃなくて笑えないんだ。


「こないな所で立ち話もなんやし、茶でも飲みながら」

「結構です」

「あら」

「ただ、次に会う時に笑い方教えますから」





せめて私の前では笑って







いつにも増して不機嫌な弓親の顔から少し視線を上にずらせば、お世辞にも綺麗とは言えないみつ編みにリボンやらボンボンやら。


「今日も派手にやられたな」

「一角!君の彼女だろ何とかなんないの!?」

「お前で遊ぶのが好きなんだとよ」

「きぃーっ!今日という今日は許しちゃおけない。一角、彼女の弱点教えてよ」

「知ってても言わねー」

「…君たちの恋路を手伝ったのは誰?」


何やら考え込み、あ、と声を出す。


「耳が弱い」

「いや、そっちの弱点じゃなくて」

「あと俺の声に弱い」

「ご馳走様」









「いやー本当にありがとうございました。江戸に来たの初めてなので」

「いいって迷子の相手するのも万事屋の仕事だからよ」

「それじゃあ、また何か機会がありましたら……え?」


ふいに差し出された掌。今時律儀に握手で別れの挨拶なんてする人がいるんだと思いつつ、自分の掌を重ねる。
するといきなりペロリと掌を舐められた。


「ひっ!?」

「知ってる?落とし物拾って届けたら1割もらえるんだよ」

「落とし物って、わたしただの迷子でしたけど!」

「どっちも似たようなもんだよ。つーわけで、いただきます」

「ぎゃっ、おま、おまわりさーん!!」




END






「じゃあ檜佐木副隊長、私の家あっちなので失礼します」

「おい、なんか暑くないか?」

「いえ別に」

「いや暑いだろ暑いからなんか冷たいもの飲みたいだろ?」

「いえ特には」

「じゃあ怖い話してやろうか?暗い道怖くなるだろ?」

「?私怖い話平気ですけど」

「あ、俺んちもそっちだった」

「反対側じゃなかったですか?」

「うっせー付き合え!」

「トイレですか?」

「ああ行く行くは下の世話も…って違う!」



end





「てめぇはこんの忙しい時に海なんかに行ってやがったのか!」

「…違います」

「いかにもって感じで焼けてきてんじゃねぇかよ」

「こ、これは太陽に見とれて焦げただけですから」

「お前は写真か」


ふと視線を落とせば海人と書かれたTシャツ。


「やっぱり海に行ってたんじゃねぇか!」

「ちがっ、このうみんちゅという響きに惹かれて」

「誰がウニだこの野郎!」

「い、言ってない!」



end







「おやすみ」

その言葉で、今日が終わる。
貴方の背中を見送り、扉を閉めて襲ってくる寂しさに耐える。
いつもなら。


「言えよ」

「え?」

「何か言いたそうな顔してんぞ」


視界が揺れる。
どこかいつもと違ったのか、戸惑いが隠せない。


「言えって」

「別に何も、」

「言え」

「っ、もっと…」


求めすぎたら、戻れなくなるのに。


「もっと一緒にいたい…離れたくない…」


ごめんなさい。困らせてごめんなさい。



「我儘な女は嫌いじゃねぇ」

「でも、おやすみってさっき」

「誰がおやすみは一回って決めたんだよ」




微笑む貴方の肩越しに、明るい未来が見えた。




end







「だから家にはそんな奴いねーって言ってんだろ、てゆーかおたくどちらさん?あぁあれね、オレオレ詐欺みたいな?へえ〜ああそう、去れ!!」


勢いよく叩きつけられた受話器。
内容からすれば恐らく下らない用件だろうその電話に、銀時にしては珍しく長く突っかっていた様子。


「間違い電話?」

「お前に」

「えっ!なんで切ったの!?」

「どこの馬の骨かも分かんねぇ男からの電話なんて繋げるかよ、知らねーよ誰だよ土方って」

「…あんたの生徒でしょ、やだもーだから携帯欲しいのに」


プライバシーもあったもんじゃないと、銀時を睨みつけ溜め息をこぼす。


「携帯電話なんておまっ、ご飯食べながらいじったり風呂に入りながらいじったりある意味うらやまし」

「変態」

「総悟くんなんてアレよ、先生の授業中に携帯いじるわ、呼んでもシカトするわ俺に変なチェーンメール送ってくるわ…」

「卒業したら絶対一人暮らしするからね!」


学生の間だけ同居という、ほぼ強制に近い形で契約書に判を押させられた。


「…留年するか?」

「やだよ」

「お前の成績表に手ぇ加えるなんざわけねぇぜ」

「おまわりさーん!ここに職権乱用しようとしてる人がいます!」




前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ