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□ねぇ
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「一角のどこが好きなの?」
いきなりの質問に驚きつつも、真面目に考える私をよそに、彼は答える時間を与える間もなく話し続ける。
「一角もさ、なんで君なんだろうね」
「すいません喧嘩売ってます?」
「貧乳だし色気ないし美しくないし」
「うふふ、どうしよっかなー殴っちゃおうかなー」
断然、僕の方が美しいよと手鏡を覗きながら誇らしげに言う弓親。
私の全身の怒りよ、この右手に集まれ!今なら殴っても許される。
大体この人、一角がいない時を見計らっていつも私の所に来て厭味を言ってくけど実は私のこと好きなんじゃないの?やっだ、好きな子ほどいじめたいって幼稚な恋愛しかできないのね!
怒りの中にも不敵な笑みを浮かべる。
「だけどね、やっぱり君じゃなきゃダメなんだと思う」
この憎たらしい背中の隙を伺いながらも、その一声で我に返った。
憎まれ口を叩いても結局、私たちを1番理解してくれているのは彼かもしれない。
「ていうか君は一角のどこに惚れたわけ?」
「ほ、惚れたとか言わないでよ恥ずかしい!」
「誰がどう見たって一角にホの字だったじゃないか、誰が協力してやったと思ってんのこの鈍感」
「だからって大勢の前であんなこと言わなくたっていいのに!」
「おっ?二人して何してんだ?」
バッドタイミングというかなんというか絶妙なタイミングで一角が顔を出した。
両手いっぱいの荷物から、どうやら他の隊に書類を届ける途中らしい。
…うちの隊長と副隊長は仕事しないからね、うん。
「いま彼女に一角のどこが好きなのか聞いてたんだよ」
「ちょっ…!」
「んなの全部に決まってんだろ」
ははは、と自信満々に笑ながら、んじゃまた後でな、と手をひらひらさせながら行く彼の背中を目を細めて見送る。
「うん、ああいうところが好きなの」
「分かる。僕も少しときめいた」
「え!やめてよ!」
「大体僕の方が美しいのに…」
「あんた男でしょー!」
END
200090906改定