マンガ
□青春色
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『これから文化祭の実行委員を決めるわよー。じゃ、あとはみんなに任せるわ☆』
『…なにがあとは任せるだ…何もしてねェだろ』
誰にでも担任がいかに適当な性格であるか分かるだろう。
『日番谷!アンタ委員決定ね☆』
思わず口をついて出た言葉は小さかったのに、しっかり聞こえていたようだ。
俺を指差しながら、にっこりと笑う悪魔…じゃなくて担任。
『…はぁ?』
それに便乗するクラスのやつら。
『じゃあ、もう一人は雛森に決定だな!』
『日番谷の相手ができる女子なんて雛森くらいだもんな』
『桃がいれば安心よね』
『桃、頑張ってね!』
『ふぇ、あ…えと…うん!』
『おい、俺はやるなんて言ってない!』
『いやいや、乱菊ちゃんの命令は絶対でしょ!』
『やるしかねェよ、日番谷!』
どいつもこいつも面倒事となれば、この結束力…雛森に至っては断りきれずに承諾してしまっている。
こうなれば、俺がやる以外に方法はないではないか。(他の野郎と一緒にやるなんて考えられるか!)
『…分かったよ』
俺も不本意ながら、仕方なく了承した。
((((素直じゃないなぁ…))))
クラスメイトのこんな思いも露知らず、委員は俺と雛森に決まった。
(チッ、やっぱりこうなっちゃうのね!)
担任の命令は、思わぬ誤算だったようだ。
『決まるの早いわねー!さすが私の教え子たち☆あ、それからもう一つ。毎年、3-Aから委員長を選出することになってるんだけど…どっちがやる?』
んなの、聞いてねェよ!誰が委員長なんて面倒極まりないことを…
『やるなら、桃のほうが向いてるよね?』
『優しいし、可愛いし、気が利くし!』
『その点、日番谷は論外だな!』
『ね、桃!』
『やっちゃいなよ!』
『えと…
ど、どうしよう、日番谷くん!私なんかでいいのかな?うぅん、よくないよね。私じゃ、みんなをまとめるとか絶対できないよぉ…ねぇ、日番谷くん…どうすればいいかなぁ?』
心底、困ったというような表情をして見上げてきたコイツを前に、俺に他の選択肢があるか?いや、ない。
『俺がやる』
((((雛森には甘いなぁ…おもしろっ))))
青春色
そんなこんなで、俺たちは学生の貴重な夏休みを返上して文化祭の準備のために、今日も学校へ向かう。
まぁ、休みの間も毎日のようにコイツといられるならいいか、とも思うのだが。(面倒臭いなんて気持ちはどこかへ落としてきた)
教室に着いて、作業をしていると珍しく担任がきた。
「いつもご苦労さま!」
「いえ!最後の文化祭なので頑張らないと!」
「雛森は偉いわね。日番谷もよく真面目に来てるじゃない」
「コイツが毎日のように迎えに来るんで、いつもみたいに遅刻の仕様がないんです」
「頑張ってるみたいだから、これで何か好きなもの買ってきなさい」
俺の嫌味はナチュラルにスルーされ、千円札を財布から取り出して言った。
「え、悪いですよ!」
「いいの!雛森よく頑張ってるから。それに委員になっちゃったのは半分私のせいだしね」
「雛森じゃなくて、俺に詫びろ」
「ほら、行って来なさい!」
やっぱりシカトか。
「えと…じゃあ、行って来ます!ありがとうございます、乱菊先生!あ、画用紙もなくなりそうだったから買って来るね!ちょっと待っててね、日番谷くん」
「あ、おい!俺…も……」
二つ結びをしたセーラー服の少女が廊下を走り去る音とセミの鳴き声が虚しく響いた。
「雛森がいなくても、真面目に仕事しなさいよ」
担任は椅子に座っている俺をいやらしく見下ろして言った。
「…俺に何の恨みがあんだよ」
「雛森と幼馴染みだからよ」
そんな変えようのない歴史を妬まれても…(ちょっと優越感)
「私もまだ仕事あるから、それじゃあね」
雛森が一人で行ってしまって、何の面白みもない教室に俺のため息が溢れた。
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