物語

□第一章 土曜日
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私とたいちが一緒に暮らし始めたのは5月のある土曜日だった。



私はその日たいちを迎えに行くために東京駅に向かう電車に乗っていた。

私の住むアパートは都内といっても都心からは離れていて東京駅までは1時間近くかかってしまう。



まだ5月なのに今日の日差しはまるで夏のようだった。
今年一番の暑さだとニュースでいっていた気がする。


そーいえば、3年前に初めてたいちに会ったのは夏だった。
そして2年前に再会したのも夏だった…。




土曜日の昼過ぎの電車はまあまあ混んでいたけど私は座ることが出来た。

外は汗ばむほどの暑さだけど電車の中は冷房が効いていて心地良くてつい私はうとうとしてしまう。

私の隣には美大生風の男の子が座っていた。
彼の香水なのかムスク系の香りが漂ってきた。
野生的ででも清潔感のある香り。
私の好きな香りだ。

彼にもたれかかりそうになる衝動を抑え私は無意味に電車の中吊り広告を眺めたりしていた。



そのとき私のケータイが震えた。



"着信中 たいち"



たいちからだ。
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