skyward

□詩編 II
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結晶
2010.11.15.

いちにち の おわり
いそがしさ の
麻酔から 解かれて

こころ が
黒ぐろとつめたい
原野のように
しん と
しずまって
めざめて
ゆく ころ。


ひとひらの
ことば が
地の上に
降りて きた。

雪の結晶は
けっして
ととのった
六花のかたち
ばかりでは
ない という。

雪の結晶 に
寄せて

人間の魂の
すがた を
ことばが
しずかに
語るとき。

呼び起こされた
思い は

降りしきり、

降り積もり、

予期せぬ 涙を
溢れさせた。


夜が明けて
思いはすべて
地に溶けても。

空 にも
地上 にも
ふたつと ない、

かたち
ととのわぬ
いとおしい
結晶、

そのひとの
存在、
そのもの は

澄み透って
いつまでも
消えることは
ない、と
信じた。








天泣
2010.11.22.

雲ひとつない
蒼空から

雨が
ひかりのように

わたしのうえに
ふる。


誰にも
哀しみを見せない

そのひとの
愛のように。



‡天泣とは、雲のない
 空から降る雨。








蒼空と雪の盟約
2010.11.24.

蒼空は
かがやく 無限の
旗。

雪は
円陣を組む六つの
翼。


多くの目に
瞶(みつ)められるものと

ただひとりの手に
受け取られるもの。

無数の光の散乱と

一粒の核心。


彼らがいなければ
大気の塵は
永遠に
塵のままでしか
ない。

だれにも視えない
大切なものを

いちばん
心の奥底に届く
色とかたちで
気づかせて。

届けられた者は
いつしか

不可能な願いを
一歩 一歩
可能にしてゆく
情熱と意志 を
胸に点すだろう。


遠い日
蒼空を見上げ

舞い落ちる雪に
手を差し出した

独りぼっちの
あの子供のように。


彼らの励ます声、
天と地に響く
深い聲を

彼は
孤独の底でも
たしかに
聴いたに違いない。

そのように
蒼空と雪は
遥かな盟友として

ひたむきに
歩みはじめる者を
今も
見守りつづけている。
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