DAY BY DAYブック

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『ツナマヨとー、梅干とー、鮭にー、後どうしよっかな…あっ、明太子とおかかも入れなきゃ…昆布も入れちゃおっかなー…』



どうも、こんにちは。魅天です。


気温も最高潮に上り、朝から晩まで蝉の大合唱でイライラしてる中、今日の4限目に調理実習が開始されます。

しかも、面倒臭いことにおにぎりテストつき。


この間はA組がやり、終了時に男子にあげる恒例行事をしたそうだけど…



『すごく騒がしかったなぁ』


いや、理由はわかってるんだけどね。
毒は流石にまずいよね。


沢田くんが大変な時に、こっちは休み時間を告げる鐘の音が鳴ってもキリのいいとこまで授業引っ張りやがった
空気の読めないティーチャーのせいで、京子ちゃんのおにぎりを催促に行けずじまい…。


いつものごとくチャイムと共に脱走を図ればよかったんだけれど、
今回は目的地が隣の教室だから直ぐに連行されると思い断念。

すごく残念。まじ残念。あわよくば、京子ちゃんの菌を体内に入れることができたのに…!!先生なんて嫌い!プン!後で力の限り弁慶の泣き所に蹴り入れてやるんだから!

『ハンッ』


だから今日は、貰えなかった代わりに、友好関係を築こうと此方からおにぎりをあげようと思います。
可愛い笑顔、頂きたいです。


あ、あと、風紀委員にも一応。
このまま見下されるのもアレなんで。餌付けです、餌付け。



キーンコーン…


「はい!今日は調理実習の日です。今回は、おにぎりを作ってもらいます。三角型に俵型の2つですね。
味は勿論、盛りつけも採点対象になりますので、頑張ってくださいね」


細かく説明をした家庭科の先生は、生徒の身だしなみをチェックし、両手を洗浄するよう促し、やっとのことで開始の合図を送る。


『お米よーし、具材よーし、風紀委員用の重箱よーし』


よっしゃ、やるぞー!


髪をいつもとは違う一つ縛りにして、色気のない黒のエプロンに三角巾の出で立ちで手をワキワキさせる。

どこからか、小さい悲鳴が聞こえたが気のせいだ。
気持悪という声も聞こえたが気のせいだ。



『あ、友人1号の佐藤さんは何作るの?』

「ちょっとその友人1号とか言うのやめ…ちょっ近づくな!」


『おっといっけね!佐藤さん貧乳だった。あぶねーあぶねー。ごめんね、つい』

「殺す。表出ろ。」

「そんなウィルスか何かみたいに……」


「まーまー落ち着きなって〜、言う本人もちっちゃいんだからさ」

「………………それもそっか。」


『貧乳って言ってごめんなさい。ぐすん。』



友人たちと戯れながらも手は止めずせっせと一個また一個と作り上げていく。

先生に渡すおにぎりは、さっさと別のお皿に綺麗に盛り付けて、
ここにいる友人と、京子ちゃん、沢田くんたちに、風紀委員と、その長へと献上するためのおにぎりは、テスト用よりも綺麗に美味しく心を込めて器へと置いていく。


周りより材料も作る量も尋常じゃないくらい多いので、さっきからなんだこいつ的な視線が送られてくる。
が、私がその視線を送っている持ち主へと顔を向けると直様そらされるので気にしない。寧ろ、その仕草が可愛いのでニヤニヤします。


「よだれ!よだれ!おにぎりに落ちるよーー!!!」


『あれま』

「あれまじゃねー!!」







*******





『おーい!そこの君ー!』


「げっ!!」

「?どうしたの?」


授業も終わり、お昼休みの時間。

テストの結果は次回の家庭科で発表されるのでいいとして…、


今現在、中庭にて。
京子ちゃんにおにぎりを渡すべく、お食事中のお友達と一緒にいるところを突撃訪問!


おそらくあのお友達は黒川花ちゃんだろう。
あの綺麗なウェーブのかかった黒い髪はそうだきっと。


「花?」

「ううん、何でもない。きっと人違いだわ…」


『おぉーい!そこの笹川京子に黒川花ぁぁー!!』

「なっ!」


がっつり目が合ったのに、私が呼びたてているのを花ちゃんが無かった事にしようとしているので、全力で名前を呼んで振り向かせる。

応答するまで逃がさないぜ。


『こんちゃー花ちゃーん京子ちゃーん!』


「っ!なんで名前知ってんのよ!?」

「あれ…?あの子って」



名前を呼んだことによって、花ちゃんは勿論、京子ちゃんも此方に顔を向ける。

そして必然的にマドンナ京子ちゃんと目が合うことになる。


『ぉぉぉ……』



ふぁぁぁぁ!やべーよあの京子ちゃんに見られてるよ私!
何あれ目おっきい!ちっちゃい鼻!ピンク色の艶めかしいくてぃびる…

今思えば、沢田くん京子ちゃんと似た顔してるよね。
だからあんな可愛いのか。だからあんな興奮するのか。


…いやはや常に見られて会話してる花ちゃんが羨ましい…っ!いや!寧ろ、二人の間に挟まっていたいよ!


可愛いなぁ…頭なでなでしたいなぁ…ぎゅっってしたいなぁ…
そんで花ちゃんに叱られたいなぁ

やっちゃ駄目かなぁ…ぐふふふふ



「うわっ…」

「!あ…!」


『はっ!いっけね唾液が出歩きやがった』ジュル

「…………うわあ」



がっつり引かれました。






「…………で、あたし達に何の用よ?」




京子ちゃんを後ろに隠しながら私に用件を伺う花ちゃん。



『…うん。話聞いてくれるだけでも嬉しいけどね、……………ちょっと離れすぎやしませんか…?』

「当たり前よ!アンタに近づいたら何されるか分かったもんじゃない…!」


3m以上離れた位置からでも、露出された肌から細かい突起が出来ているのが伺える。

鳥肌まじ凄いんですけど。


『いやだなぁ何もしないよー』

「とか言いながらニヤニヤすんな!」

『笑顔だよえ・が・お』

「卑しさが隠れきれてないのよ!何かする気満々じゃない!」


『だからしないって〜』


「ちょっと!にじり寄らないでよ!京子行こ!」

「わっ花!」


『ウソウソ!行かないで!二人に渡したいものがあるんですぅぅぅぅ!』



そう懇願しながら二人を引き留めると、気になったのか眉間に皺を寄せながらも振り向いてくれる。




「……………………変な物じゃないでしょーね?」



『違うよ、さっき作ったの。ほらこれ』


包みの竹皮を広げ、中身のおにぎりを見せる。
そこには某ネズミや某クマなど、様々なメジャーキャラクターに扮したおにぎりたちが竹皮の上で並んでいた。


予想外だったのか目をおっ広げるお二人。特に花ちゃん。


「おにぎり?」


『そっ』


「わああっ!凄い!かわいい!」


「これ、アンタが作ったの?へぇえ…意外だわ」



おぉ…二人の中では中々の高評価っぽいぞ。

先程の怪訝な顔とは打って変わって、今や口角が上がり、私の手に乗ってるおにぎりに釘付けだ。



ごく普通のおにぎりを作ったところで、変な噂が立っている私からは受け取ってもらないだろう。相手はそういうのには敏感な女子だし。

そう考えた私は工夫を凝らそうと、生前流行っていたキャラ弁を思い出し
実行に移したのが功を奏してこんな間近で京子ちゃんと花ちゃんの笑顔が見れることになった。


不器用ながらもせっせと作ってよかった!くそっお前らの方が可愛いよ!!


『今日の4限にね、調理実習があってさ』

「あっおにぎりテスト?」

『そーそ、おにぎりなんて今まで沢山作ってきたから超簡単だし時間余っちゃうのもあれだしさ。
せっかくだからキャラおにぎりでも作って出来がよかったら誰かにあげようかなって』


「ふーん、でもなんでアタシらなわけ?」

『そりゃあ出来れば可愛い子や美人な人にあげたいからね!
それにこんなん女子好きでしょ?』


「アンタだって女子じゃない」

『……………そういえば!』



このようにごく普通に対話をしているが、言葉を少しずつ交わしている度に後ろに下がるのは
やはり私に対しての警戒心が強いからなのか。
おにぎりを見てニコニコしている京子ちゃんの腕をとって引っ張る花ちゃんは苦笑いだ。



『いや待てよ!何故そんなに離れる!?別に何も変なの入れてないからね!?
入れてないにせよ変なことしないし!!』


「本当でしょーね?」

『まじ!』


「………………………やっぱアンタ信用ならないわ」

『なんで!?』



「まあ、日頃の行いのせいね」

『ぬ……ぬぅ…』



事実を突かれ言葉が濁る。

ここまで来たらどうしても渡したくなるものが心情で。

一番手を込んで作ったのにな…


あーうーと唸って確実に受け取ってもらう方法を足りない頭でぜえぜえ考えていると、
ふと視界の端に京子ちゃんの白くて細い可愛いお手手が映る。


『お?』



「ねえ、これ、貰っていいの?」

「ちょっと京子!」


『!ももももちろん!貰ってくれたらこれ幸い!』


「ほんと!?やったぁっ!ありがとう魅天ちゃんっ!大切に食べるねっ」




『きっ……きゃわわ……っ』


「ちょっと京子本気!?」



京子ちゃんが天使のように微笑むのを見て無意識的に手が口元を抑える。

花ちゃんが一生懸命焦った顔して止めているけど、
今や私の手にあったおにぎりは天使京子ちゃんの手中だ。

一つ目の目的が達成され鼓舞するが、隣の花ちゃんによっていつ失敗するか分からない。
ので、説得される前に退散しようと思う。


まだ天使京子ちゃんのキュートな笑顔と花ちゃんの困った顔を凝視していたいけど……くっ

ここは致し方ない。さらばっ



『じゃっ!私まだ用事があるんでー!また後でお話しよーね!アディオース!』


「あっ!待ちなさい!まだ話は……!」



最後まで聞き終わる前にBダッシュでその場を走り去る。

つい嬉しくてうふふふふふとか笑いながら逃げただけ皆さん廊下の端に移動してくれました。
ありがたや。


いやはやとっても可愛かったな二人共!

精神年齢ババアな私にとって中学生女子は癒しの対象です。げへへへ。


さぁさ!次は誰のとこに行こっかな!







mission1 -clear-

(キャーッ)
(待て待て〜!アハハハハははは!)
(ヒィィィッィィィ!!!)
(まだまだ休み時間は有り余ってるから私と一緒に夢の世界へいこーよー!うヒュヒュヒュヒュ!)
(ギャーッ来ないでぇぇぇっ!!)
(誰かああああっ!!)


 
 

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