DAY BY DAYブック

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衣替えの季節もとうに終わり、私にも少なからずだが友人ができた明くる日。


中学校のイベント行事の1つ、球技大会がやって来た。


ルンルン気分で体操着に着替えていると、後ろから友人に肩を叩かれた。



「魅天は何に出るんだっけ?」


『私?私は負けそうになった種目全般の助っ人として出るよ。』


「全般って多いな!ウチそんな球技得意な奴らいないからアンタ引っ張りだこできっと大変よ!?そんなんで後半体力もつの!?」


『ったりめーよ!健全な女子中学生たるもの青春を謳歌しなくてどうする!!スポーツをする楽しさ、競争して勝利する喜び、敗北した悔しさ!!疲労で息を切らし体操服がビショビショになる位の汗!風の抵抗で体のラインが露になる選手たち!ジャンプを用いる競技では腹チラシャッターチャァァァンス!!!こんな素晴らしい行事参加せずにおられまいか!!』



「アンタの青春どっか他とズレてるわ。そんなに選手見たいなら応援する側にまわった方がいいんじゃない!?」



ばかめ!私はあくまで選手側として青春の汗を流し皆と共に助け合う共同作業をしたいんだよ!!


顔アップだとナニしてるんじゃないかと想像せざるおえない中、誰よりも間近いとこで視姦したいんだ…ッ!!



『じゃ、ちょっくら行ってきまーす!!』



「何か可哀想になってきたウチのクラス。」




頭を抱える友人には悪いけど欲望には勝てない私。


今日も手を出します。











―グラウンドにて。

猛々しい雄叫びと共に軽快な音が鳴り響いた。



『うおらァアア!!』


カキーン



「「「おおおおおおおおおお!!!」」」



「場外ホームラン!!」

「天城の奴、相手に取らせないとかマジパネェ!」


「凄い…向かってくる球全部場外なんて…。」


「勝…?…凄い!私たちかっちゃった!!A組とC組に勝っちゃった!!」


『しゃあああ!!楽勝楽勝!!』



ソフトボール 1-B 優勝。




「天城さん!次お願いします!」


『おうよ!』




それからもドッチボール、バスケ、バトミントン、サッカーという半分以上の種目に駆り出された私は、自慢の運動神経を発揮し、ほぼ逆転勝利をはたした。



本当にウチのクラス球技に弱い奴多いのね。


お姉さんさっきから息切れが止まらんよ。


若返ったっていうのに体力はまだまだか。






先程終えた最後の競技、サッカー。


初っ端から調子乗って足首を捻ってしまったので、その勝負は残念ながらこちらの負け。


痛みと悔しさで悶々といている中、現在保健室にて先生に手当てをしてもらっている。




「はい!終わり!」


『わー……ありがとうございます。』



「あらあら。そんな落ち込まなくたって最高の試合だったわよお!」


『違うんです。そうじゃなくて、足。いつ頃治るんですかこれ?』


「あ…ああ!そうよね!この程度だったら二〜三日後にはもう大丈夫よ。」



笑顔で話す豊満なバディを持つ保険医。


それを何度も見ながらも考える。




『二〜三日…。……後三日は逃亡する皆を追いかけ回すことはできないんですね。』






「………………え?」





『怪我人という立場を利用して皆の同情を引くか…。そんで逃げられないようにさっさと調教してしまおう。』



足首に響かないよう、ゆっくりと椅子から立ち上がる。



保健の先生は私の発言に対して予想外だったのか唖然としていた。




「……え?天城さんってあの噂の…?」



『…どの噂か分かりませんが、変態紳士とは私のことです。』



と先生のその豊満な胸を両手でわし掴む。


おおっ凄い弾力。




『うはっ大きいでsグボォ!!



「まだバレーやってるみたいだから見に行ったらどうかしら?」




『……う…うぅ…はい。行ってきまふ。』




アッパーカットを見事クリーンヒットさせられた私は床でピクピクと動く。



イタイな。幸せの痛みかなこれ。


っていうか、この人本当に保健の先生だよね?




これ以上巨乳先生を怒らせないよう、足と顎を労わりながら立ち上がり
二度目のお礼を言い松葉杖を使って保健室を後にする。



体育館を目指していると、マドンナ的存在の京子ちゃんと沢田君を見かけた。



手繋いどる…。


『二人共かわええハァハァ。…あ、そっか。沢田君バレー出るんだっけ。』



あまりにも球技に熱中していた為すっかり
忘れてた。



そうだそうだ。これも原作にあった話だ。


確か二話の死ぬ気弾が使えなくなるっていうの。



『……こーしちゃいられねえ。沢田くんのダメっぷりを見なきゃ。』



松葉杖のせいであまりスピードは出ないが必死に体を動かす。



ぶはっ息切れてきたやべっ

松葉杖扱い辛…
階段なくてよかったー…げほっ。



それでも沢田くん見たさに我武者羅に突き進むと目的地の体育館が見えてくる。




そして外からでも聞こえてくる位の怒鳴り声に私は密かに眉を寄せた。


お取り込み中かなと、目立たないようにそろーっと中を覗くと
生徒に責められている、いつもの沢田くんがいた。


イライラしてても皆可愛いな…


『はあ…はあ……でも疲れは消えずってね。…ゲホッ』



誰にも見つからない程度に中へ入り、再開されたバレーを見学する。


その間、怒鳴られ注意されたにもかかわらず、゛ダメ゛の本領をまた発揮する沢田くん。



本当凄いこの子。ここまでくると感動すら覚えるよ。

終わったら抱きしめて慰めてやろう…。うん。




ピッ

「第一セット終了。」



『233枚か……うむ、よく撮れてる。次はこっちのアングルから…』


選手が息を整えている間に、疲労回復した私はカメラ片手に恍惚の表情を浮かべていた。


中身は勿論、先ほどのバレーでのダメツナくん。



体育館に向かう途中、早く帰れるようにと制服姿の友人が私の鞄を持って待機してくれてたおかげで
階段を登らずにカメラを手に入れることができた。


その友人はバレーには興味ないのか、はたまた多人数がバレーに夢中で気づかれにくい中
何を仕出かすか判らない私と一緒にいるのが嫌なのか。

校門付近で携帯を弄りながら待っているという。


待っててくれてるだけでもありがたや…!



なんであの子は私の友達になってくれたんだろうと疑問だったが、
きっとツンデレさんなんだと勝手に自分の中で決めつけ、思考を違う方へと変える。




…そういえばB組、一回戦で負けたんだっけか。

私がソフトで荒ぶっってる時に。


そう思うと僅差でソフト部の子に助っ人を頼まれたのは良かったのかもしれない。



だって相手チーム原作だとC組だもの。



カメラから視線を外して試合はまだかとコート内を見ると、
可愛い可愛い沢田くんが見当たらなかった。


焦って辺りを見渡すが見つからない。



『あれ?顔でも洗いに行ったか?……慰めにでも行ってやろうかな……デュフフ』


ニヤニヤと笑みを作り独り言を呟いていると(やべっヨダレが)、ふと視界に白いモヤが映った。



『…何だあれ』



モヤ……火事?



そこは体育館の二階のギャラリーで、
その煙は少しだけ見えた人陰の上部分から出ていた。



だとするとあれはタバコの煙か。


火事じゃなくてよかったと内心ホッとした。



ったく、こんな子供がわんさかいる処でタバコを吸うなんて人としてどうかと思うぞ私は。




ずっと嫌な気分で見ていると、その人物はゆらりと動く。
そして一瞬見えたキラリと太陽の陽で反射した銀色の頭部。







銀髪……?


珍しいな、並盛に銀髪の子がいるなんて。


…いや待て。
そんな目立つ髪をしててここにいるって事は主要人物じゃないのか……?


タバコと銀髪…。










あっ あっ!!





『忠犬ハチ公!!!犬だ犬!!!女王様(沢田くん)の犬!!!』




その人物が何者か判った途端、
興奮のあまり大勢の生徒がいる中で大きな声を発してしまった。

しかも犬連呼。


まあ、言わずもなが皆さん打ち合わせでもしたんじゃねーのって位、綺麗に叫び声を上げて私から距離を空けましたよ。ええ。



『はいはい通りますよっとー!』


「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!」



『いや、そんな悲鳴上げなくたって』



全生徒とコミュニケーション(私の中では)をとっていると、あっと言う間に目的の場所。


下で「怖かった」と言う声が聞こえた。


皆どんだけ照れ屋さんなんだ。





『はあ…はあ…階段きつ……………いねえし。』



そこには誰一人として居なくもうハチ公は去っていた後だった。



もうちょっと早く着けばと言うか、気付いていれば沢田くんより先に調教できたというに……。


沢田くんに懐いてしまったら攻略が難しくなるぞ。



軽く沈んでいると、どこからともなく銃声が
聞こえてきた。


ハッと我に返った私はその場で下にいるだろう沢田くんを見遣る。



どっ

「やられたーー!!」


「どうしたツナ!?」



両足を撃たれ後方に倒れ込む沢田くんに覆いかぶさりたい欲望を抑えていると、
ふと頭に浮かぶ赤ん坊リボーンの姿。



『……………ハッ!!』



そうだよ。沢田くん撃たれたんだ。リボーンに。


その撃った本人は確か私と同じギャラリーにいた筈だ。



と言うか、すぐ上で銃をぶっ放したってのに何故誰も気にしないんだ。

銃声めっちゃしてたぞ。



『……あ。いた。』



犯人のリボーンを向かい側で見つける。


ライフルをその小さな体で淡々としまっているのを見て、
やっぱ殺し屋なんだとこの世界に来て初めて認識する。



それからと沢田くんを見続ける小さな家庭教師は、凝視する私に全く気付かない。




『まぁ…生気ないしな私。』



死人だから気配がない。見られてる気がしないか。


主人公に接触したので、これから危険な目に遭うと思うとまあ便利かもしれないけれど、
誰にも気付いてもらえないっていうのも何かそれはそれで悲しいな。



幾度も人を殺して戦闘を繰り返した筈なんだから気配には普通の人よりも敏感だろう。


なのにこちらをチラリとも見ない。








『………クソッ 気付けコノヤロウ!!』



八つ当たりでみっともないが、この気分を打ち消す様に
履いていた上履きを脱いでリボーンの方へとぶん投げる。



「!」



当然の事だけれど、軽々と避けました。



そしてその大きな目に私を映す。


この後のことを考えていなかった私は咄嗟に友人にするように笑顔で手を振ってみた。



数秒視線を交じ合わせた後、私はおもむろに立ち上がって帰り支度を始める。



忠犬に会えなかったし、最後に沢田くんに会って(セクハラして)帰ろう。



存在に気づいてくれたならそれでいい。

会話なんてしなくていいだろう。


流石に赤ん坊には欲情はしないのでここは取り敢えずパスする。



不審に思っただろーなぁ…。



未だ視線を感じるんですもの。痛い。痛いよ。痛いです。

やっぱ上履きなんて投げつけるんじゃなかった。






 
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