DAY BY DAYブック

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死を受け入れられず錯乱しまくってた私はやっとのことで落ち着きを取り戻した。


空気を大量に肺に流し込もうとするが、喉を酷使した為か痛みと共に噎せこんだ。
もう涙は渇いたと思っていたが、あまりの痛みと苦しみにまた目が潤み、
そして同時に自分の死の有り様が頭の隅に映った。


『っ…』


一瞬心臓が抉られた様に痛んだが、もう終わったことだ。
苦しんだってどうにもならない。

首を勢いよく振って気持ちの切り替えをする。


取り敢えずこの状況をどうにかしないといけない。



まず泣き始めてからもうどのくらい経ったか思惟する。

電気は点いておらず、太陽が昇る沈むを数回繰り返したのは何となく感じていた。



『何日経ったんだろう。』


嗚呼 絶対に目腫れてるな…。


そう思いながら少し身じろぐと、肩に掛かっていた髪がはらりと落ちた。









『…………は』



頭が真っ白になる。


窓から入る陽の光で照らされた私の髪の毛。

純日本人の私は勿論黒色の筈だ。

だが目に見える色は赤。紅。



あれ?おかしいな。泣きすぎて目おかしくなったのか?


恐る恐る髪を手に取りまじまじと見つめる。



紅だ。


間違いなく紅色。


どうなっているんだ。
辺りを見渡しても見慣れた色ばかりで、変わっていたのは髪の毛のみだ。


髪を食い入るように見ていると、視界の端にふと映る私の体。


またも思考が止まる。


髪の次に目に見えるソレは、2つのお山。つまり胸。

サラサラの髪から手を離し、両手でその山をわしづかむ。






『しぼんでるぅぅぅぅぅぅぅううう!!!!』




ショックだ。雷が落ちた様な衝撃が走る。
このままショック死しそうな勢いだ。……いやもう死んでるけど。


『なななななんでぇぇぇぇ!!?えっ!?えっ!?』



突然の死から目覚めたそこは自分の部屋。

視界に映った髪の毛は紅色。

しぼんでしまった胸。



本当にどうなっているんだ。
流石に混乱する。


『…ハッ!そうだ鏡!』


思い立ったが吉日。

洗面所の鏡台へと行こうと部屋を出た。
だが走り出した足はピタリと止まる。



『………何、これ』



そこには下へと段が連なっている、所謂階段があった。


『待て待て待て待て。』



私は現在一人暮らしの筈だ。
1LDKのマンションで、階段なんて部屋を出てすぐなんてあるわけがない。
あるとしたら玄関を出ての他住人との共同のやつだけだ。


それにこんな一戸建てみたいな家、今の収入じゃ不可能。絶対無理。



『マジ何なのさ…。』


冷や汗が出る。

こんなところで突っ立っていても仕方がないので、意を決してその階段を下り
一歩一歩地を踏みしめて洗面所に着く。


ゆっくりと目の前の鏡を見た。

私だ。私がいる。


だが所々おかしい点があった。


まずはやはりと言うべきか、紅く長い髪の毛。

そして胸。小さくなったはなっていたのだが、胸だけじゃない。身長も幾分か縮んでいる。
顔も大分幼くなっていて、着ていた服もぶかぶかだ。


パチ


鏡に映る自分自身の目と目が合わさる。


生気がない。死んだ魚の目。光を遮断しているかのように濁っていた。
よく見ると、瞳孔もこれでもかと言う位開ききっている。

頬も唇もいつもの赤みはなく、肌と同じ白さ。


―まるで死人。そう思うと、この白い肌も青ざめて見えた。





紅い髪は、あの時の出血が髪全体を染め上げたからだろうか。

だとしたら紅色ではなく、血色の髪。




『……死がまとわりついてるみたい。』



気持チ悪イ。



この容姿に吐き気がこみ上げてくる。

洗面台に手をつき、胃から逆流してくるモノを、この気持ち悪さが消えるまで吐き出した。






血色


(私は死人)
(死んだら皆こうなるのかな)

 

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